禁忌な気がした

江田光秀

禁忌な気がした

私は女の子が好きだ。気づいたのはとても幼い頃で、みんなの男の子に対する感情を私は女の子に持っているなくらいのものだった。でも、大きくなるにつれて、私は自分が普通では無いことを理解し始めた。そして、現在高校2年生になった。

私は恋をしている。同じクラスの市川愛菜に、人生で初めての純愛をしていた。性的な興奮では無い、恋愛とは何か。わかりそうなくらいの恋。

「えっ!?じゃあ愛菜は女子が好きなの?」

思考を遮るような甲高い声がする。愛菜に引っ付く害虫だ。

「そうなんだよね、、引いた?」弱々しい声で首を傾ける彼女は、紛れもない天使だった。数秒の無音。打ち破るように聞こえてきたのは、

「そんなわけないじゃん!」「そんなこと否定するやつ時代遅れだろ」「恋愛なんて自由でしょ」という混じり気のない純粋だった。そんな声が飛び交って居ることに愛菜は安堵していた。

私は嬉しさの中に少しの疑念を抱いていた。もし、これがクラスで人気者の愛菜じゃなかったら?愛菜が好きなのが実姉だったら?同じように言葉を投げかけられただろうか。次々と浮かんでくる負の言葉に恐ろしくなった。気づかないようにしていた現実、見て見ぬふりを出来ぬ程に増幅していた。私のコンプレックスは、レズビアンである自分なのだ。

私はたまらなくなって、トイレに駆け込んだ。便器に顔を近づけ、私は嘔吐した。気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。嘔吐。気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。嘔吐。吐くものもなくなって、涙目になって、冷静になった。あのタイミングで教室を出てきたら、まるで愛菜のレズビアンを否定したようではないか。

タッタッタッ、軽快な足取りだ。この足音だけは知ってる。

「美咲ちゃん!大丈夫?体調悪い?」

「愛菜さん、大丈夫だから気にしないで」

「もしかして、レズビアンとか反対派?」

「そんなわけないよ、どんな恋愛も素敵だと思うよ。」

嘘偽りのない本心だった。

「じゃあさ、私が美咲ちゃんと付き合いたいって言ったら?」

気持ち悪い、。こんな幸運すぎる出来事に私は素直に喜べない。それどころか、汚物と同等の不快感がある。

「いきなり言われても困るよねー、でも本心なんだ。考えといてくれると嬉しい。」

愛菜は優しい。私と愛菜の間には特別な関係も何も無かった。高校に入ってから、中学も一緒だということを知った。2人とも早く来るから、その時に少し話す程度で、進展も特にはない。

「あの、愛菜さん、私は、あなたとは付き合えません。」勝手に出ていた。私は喉ギリギリまで来ている胃液を必死で抑えている。私は、女の子が好きだ。正確に言うならは、愛菜が好きだ。でも私は、愛菜が好きだという自分のことが嫌いなんだ。

「そうだよね、ごめんごめん笑」手を合わせて、謝る素振りをすると、走って出ていってしまった。トイレの汚さなど気にせずに、しゃがみ込んだ。

時代に合わせられない、自分を認めきれない。なら簡単だ、殺せばいい。私はレズビアンじゃないし、愛菜のことなど何も思っていない。


1年後

「美咲はさ、この中だったら誰が一番タイプ?」

目の前にはファッション雑誌、顔立ちの整った4人が大きくうつっている。

「この右から2番目の黒髪の人かな、落ち着いてて素敵だなって思うよ。」

私は、センター分けで黒髪の男の子を指さした。

「美咲はほんと真面目だよね。私はね、赤髪の子!チャラそうでいいよねー」

確かにいいかもと相槌をうつ。


「新作飲めてよかったよー」

「毎回美味しいから太っちゃうね」

目の前には女性が手を繋いで2人で歩いている、雰囲気から見ても恋人だろう。

「正直さ、レズビアンってキモくない?身近にいたら狙われそうで怖いし笑」

誰もお前なんか狙わないよばーか

「そうだね、確かにキモチワルイかも。」

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禁忌な気がした 江田光秀 @eta_s02

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