あとがき

『ヨルコウ~レ・ユエ・ユアン前日譚~』を最後までお読みいただき、ありがとうございました!

 『ヨルコウ』はもともと『レ・ユエ・ユアン』と『アイデンティティ・シンクロニシティ』の間に起きたことを補完する物語として書き始めたのですが、途中で完全に筆が止まってしまい、しばらくの間PC内に放り込まれていました……。

 とはいえ完結させずに置きっぱなしにすることを自分自身が許せず、何とか書き終わりたいなという思いで、カクヨムで週一度の連載を始めることにしました。この作品が完結できたのは、更新のたびに覗きに来てくださる方、応援コメント、❤️や⭐️レビューを付けてくださった皆さんのお陰です。本当にありがとうございました!


 『ヨルコウ』の主人公、ルネアとテミスという二人の女性は、『レ・ユエ・ユアン』でカイン達がユリアスを打倒するためのきっかけを作った人達でした。

 ルネアはイブの人々のために役割を放棄して滅びる道を選びます。ユリアスや彼の率いるノア人達は精神の安定を欠くことになり、結果的に神剣ドゥリンダナがカインの手に渡りました。

 テミスは恋人と戦友を失ってしまいますが、〝氷喰〟と《首喰い》という一大勢力を壊滅させ、マキナやディルを支援しました。

 

 『ヨルコウ』の物語は、カイン達から見ると全く知る由も無いことであります。テミスとカインは二度顔を合わせていますが、カインの中では「目的は分からないが協力してくれる人」という認識だったことでしょう。

 実はこういうことが、現実世界でもたくさん起きていると思うのです。

 人間は自分が知った聞いた見たこと以外は認識できないので、その範囲内だけを「自分の世界」と思い込みがちですが、実は遠いところで誰かと繋がっています。取るに取らないと思っていた血縁が、祖先の生涯で苦汁をなめるような大変な苦労があった末に受け継がれた血であったとか、いま仲良くしている相手が歴史を辿れば同じ家系の出身だった、なんてことも……あるかもしれません。

 私自身はそういうものをとても尊いと感じますし、あらゆる可能性として信じています。


 もし『アイデンティティ・シンクロニシティ』『レ・ユエ・ユアン』『ヨルコウ』を全てお読みくださった方がいれば、このキャラクターは未来ではこうなってしまうんだ……という場面が、ちょくちょく垣間見えると思います。悲しくなってしまった、不快だったという方がいらっしゃったら、申し訳ありません。

 私は「人生は苦しいもの」という人生観を信じてまして、ずっと永遠に幸せではいられない、無情で辛く苦しむ時期がやってくる、だからこそ人の生き様は美しくて儚い……と考えています。人を苦しめたいわけじゃないのですが、苦しみがあるからこそ輝く、と思うのです。そんなへきが存分に発揮されてしまった結果……こうなりました。重ねてとはなりますが、嫌な気持ちにさせてしまった方へは謹んでお詫び申し上げます。


 最終話では、かなりファンタジーな展開を迎えました。

 こちらは最新作『ロマンス・ファンタジック・カリヴィエーラ〜』(長いので以降ロマファンと呼称します)とも繋がる世界観のひとつでもあります。まだすぐに答えが提示される予定はないので、何かそんな感じなんだな〜と思っていただければ幸いです。

 

 小説を書き始めるまで十年以上、頭の中を占有していた物語を完結させることができて、またひとつ生きた意味を得ました。

 ここまでお付き合いいただいたこと、本当に心から感謝申し上げます。

 懲りずに暗い話になってしまうかもしれませんが、また書きたいと思いますので、良かったら遊びにいらしてください。


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 ヨルコウ=預流向/よるこう 仏教用語。四向四果における悟りの準備段階で、預流という位に向かって修行すること

 

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【ここから下、おまけのどうでもいい話】

 小説を書く時には作品ごとにプレイリストを作成し、音楽を聞きながら書いています。

『ヨルコウ』は戦いばかりなので戦記物のゲーム音楽、あの紋章タイトルとか超有名ファンタジーゲームの外伝等のBGMが中心でした。歌詞が聞こえてくると文章が引っ張られるので、執筆時にはインスト系が好ましいなと思っています。もしおすすめの曲などあれば、こっそり教えてくれたら嬉しいです。

 それではまた!

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ヨルコウ~レ・ユエ・ユアン前日譚~ 伊藤沃雪 @yousetsu

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