20年越しに発掘された𓏸𓏸

縦縞ヨリ

20年越しに発掘された𓏸𓏸


 うっかり20年前に埋めた黒歴史を発掘してしまいましたのでご報告させてください。

 発端は父と母の別居でございまして、母から

「子供達を連れて出ていくから、実家に残っている私物を処分せよ」

 とのお達しがあったんです。

 なんせ熟年別居ですから、子供達と言ってもまあ大人です。かく言う私もとうに結婚しており、面倒ながら実家の片付けに行く事になりました。

 とは言え、自分が独立したのは18歳の時で、押入れに収まるだけの荷物が残っているだけです。当時は必要なものとして取ってあったものも、20年も触らないなら最早無用の長物。分別しつつ殆ど全てをゴミ袋に押し込んでいたのですが、そいつは突然現れました。

 厚さ4cmほど、たぶんB5サイズの、茶色い紙にきっちりと包まれた紙の束。

 見た目は恐らくコピー紙か、印刷用の色上質紙か何かだろうというものでした。

 片側だけ丁寧に開けてあり、開くと紙の色は灰色がかった水色と、薄い紫色。

 二次創作で同人誌を発行するのが趣味である私は、大喜びでその紙を引き抜いてみました。

 1枚ペロッと手に取ったそれには、着物を着て手に大鎌をち、アンニュイな表情でこちらを見つめるオッドアイの青年の、拙いイラストが印刷されておりました。

 一瞬で蘇る記憶。

 

 中学生の時に仲の良かった隣のクラスの女の子(なんと三十路をとうに越えた今でも一緒に遊ぶ仲です)。

 その子に誘われて、所謂「同人便箋」を制作した幼い記憶です。

 確か何種類以上だと割引になるからとかそんな話で誘われ、資金的にも千円か二千円か、そのくらいだったと思います。

 私は一生懸命当時の「オリジナルキャラクター(なんかとても深い因縁を抱えていた気がするけど何も思い出せない)」の絵を原稿用紙に二枚書いて、便箋として機能するようにちゃんと余白をたっぷり開けて、友達に提出しました。

 ちなみに当時は同人活動をしておらず、単に「やってみたい」という子供なりの好奇心でした。

 ちなみにもう1枚のイラストは、包帯ぐるぐる巻きの身体の、女物の着物を着た少年と花々でした。(嫌いじゃないぜ!そのセンス!と内心思いましたがやはり絵が拙い)

 同人活動をしておりませんでしたので、当然ながらそれは、行くあてもない紙の束でした。

 そして何より私は、絵が上手くありませんでした。

 手元に届いて一度確認し、でも友達もこんなの貰っても困るよなと思った卑屈な私は、処分に困って取り敢えず押し入れにしまい込んだのです。


 そして、冷暗所に保管されていたそれは20年の時を経ても一切変色することも無く、私の手元に戻ってきたと言う訳です。

 どうすりゃええのこれは。

 実家で捨てたら母の検閲に引っかかった挙句、「娘が描いたの!上手でしょ!」と言って近所親戚職場と配布しかねません。(割とマジで)

 私は仕方なくそれを家に持ち帰ることにしました。他に持って帰った物はBUMP OF CHICKENのツアーグッズだけでした。

 そうして、その厨二病を印刷した約400枚の紙束は、火曜日の朝他の紙に混ぜて、ひっそりとリサイクルペーパーという名のお焚き上げに出しました。


 ちなみにお焚き上げが回収された先は夫の勤務する紙問屋です。業務上平気だとは思うのですが、僅かばかりでも夫の目に触れていたらと思うと、なんとも言えない居た堪れない気持ちになります。

 

 

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