ゲーム

星見守灯也

ゲーム

 わたしはゲームが好きだ。

 ゲームの中なら何だってできる。

 空も飛べるし、竜にも乗れる。

 キレイな服を着て、モンスターと戦って……。

 盗み、殺し、放火だって自由にできる。

 相手はNPCだから気にしなくていい。




 ある日、道を歩いていると、傘を持ったおじさんがいた。

 あ、ラッキー。こっちを警戒していない。

 わたしは隠密モードで近づき、カバンに手を伸ばした。

 かわいいアクセサリーのひとつくらいにはなるといいな。


「こら! 何やってる!?」


 うわ、やば。こいつ、中に誰かがいるキャラクターだっけ。

 いや、違う。これ、ゲームじゃなくて、リアルだ。




 すぐに警察を呼ばれて、問い詰められた。


「だから、ちょっとゲームと間違っただけで……」

「ゲームだって?」


 おじさんが警官の顔を見た。

 警官は手帳を見ていたが、やがてわたしのほうを向いて言った。


「カルマが−100以下になりましたので、あなたは悪人として設定されました」

「え?」


「そうか、なら殺しても私のカルマは下がらないな」


 その瞬間、わたしは長傘で貫かれていた。

 吹き出る血を眺めて、遠くなる意識の隅でぼんやりと思う。


 あれ、これゲームだっけ、リアルだっけ。




 わたしはリアルに戻れるのかな。

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ゲーム 星見守灯也 @hoshimi_motoya

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