本編

 やっと念願の大坂城を見ることが出来そうだ!

戦国時代が大好きなアキヅは休暇を利用して大坂城を見に来た、、、


はずだったが…。


えっ?ここはどこだ?


急いで地図アプリで現在位置と大坂城の位置を確認した。


はぁ~ここまで来て出口間違えたなんて情けないなぁ。

大坂城はめっちゃ見たいけど引き返すの面倒くさいしなぁ…


アプリの画面にはすぐ近くで大坂城の天守閣が見られる史跡があると

表示されていた。


この辺りの史跡なら戦国関連かもしれないし、ついでに見ておくのも

いいかもしれない。


『史跡 難波宮跡なにわのみやあと


史跡だから見ごたえのあるものがあるんじゃないかと期待して来たけど

なんだい此処は?

ただのだだっ広い公園じゃないのか?


俺、騙されたのかも?


その史跡に対して興味は半減したので、

天守閣が見える場所を探してみることにした。


すると公園の中に少し高くなっている場所を発見した。

少し高い場所だし天守閣がよく見えるかもしれない。

そう思って近づいてみると建物?の説明があった。


『大極殿正殿跡』


飛鳥時代から奈良時代辺りの史跡らしい。

その頃って万葉歌人とかいて、恋の歌とか交換してたり

ふわーーっと生きてそうな時代のイメージだよなぁ。

戦国みたいに戦うとか下剋上とか、人を陥れて天下を目指すとか

殺伐としたイメージないよねぇ。

そう言いながら史跡の階段を上って周囲を見渡した。



その時ドーンという音と衝撃で一瞬気を失った。



目が覚めると目の前に幼い男の子が立っていた。


おかえりなさい。コノカミ。ずっとまっていました。


そうですか。シキは良い子にしていましたか?


はい!


何故か俺はこの少年を知っていて普通に会話している。

何故だ?


ただいつもと違うのは言葉も動作もゆっくり…

いや優雅というか、とても上品な動きになっていることに気づいた。


よく見ると風景が変わっている!


さっきまでの殺風景な公園から雅やかな建物に変わっていた。

自分の服も現代の服ではなくなっている!

建物の中に置いてある調度品なども今のものではない…。

どうしたんだ?何があったんだ?!


もしかして、今は飛鳥時代なのですか?

(不意に口に出た言葉がいつもの俺とは違っている!)


どうなされました、コノカミ?

あいかわらず、ぼんやりされているみたいですね。


シキという名の少年は楽しそうに笑っている。

笑いながら近くにあった果物に手をのばした。


おなかがすきました。これいただいていいですよね?


やめなさい!!

これを食したらシキはこの世に居られなくなりますよ!


さっきまで悠長な話し方だった俺、コノカミ?が急に激しくキツイ口調で

シキを叱っている。


コ、コノカミ。ごめんなさい。


驚かせてしまって悪かったね。

でもねシキ、この部屋にある食べ物のほとんどに毒が入ってるから

私が良いというもの以外は口にしてはいけません。


どく?どうしてですか?


この部屋の食べ物に毒を入れたら死ぬのは誰ですか?


ま、まさか…。


そう。私の周りには危ないモノや人が多いのですよ。


これは飛鳥時代の誰かの記憶なのか?

俺は現代から飛鳥時代のコノカミという人と

シンクロしているらしい…。



ガガカッ!


激しい音がした。

場面が変わったみたいで、俺はナカノという人と話をしてた。

(ナカノ?誰だそりゃ?)


だからナカノ。お願いですからシキを私に預けて貰えませんか。

皇位継承など私には無用。その願いさえ叶えば三種の神器さんしゅのじんぎ

お渡ししましょう。


それほどシキが可愛いか?!

ならば私の命で死罪を言い渡すが、処刑はせずに逃がす。

その後は鄙びた場所で暮らせる様に手配しよう。それでいいか?


そして、ナカノとの約束通りニセの死罪を言い渡され

私は2人の男と共に旅装束をして都を出た。


あと少し先に行けば解き放たれるはず…。そう思って歩いていた。

ある小高い丘の中腹に差し掛かった時、背中を蹴られ

前のめりになって膝をついた。


何事かと振り向いた瞬間、青龍刀の様な大きな刃物が私に向かって

振り下ろされるのが見えた。


そこで記憶が途切れた。


そこからは、シキの目を借りて飛鳥時代の続きを見ることになった。


シキは美しい箱をナカノから貰った。

箱を開けた瞬間シキは叫び狂乱した。

その中には私が死んだ証しが入っていたらしい。


それ以降、明るかったシキは何も語らなくなった。



ゴーーーーッ!

次には激しい音と共に猛火が迫ってきた。


激しく火の粉が舞う中で数人の男達が走り出てきた。


これで俺達のミコ様も正式に皇位継承できるってもんだ!

この三種の神器がなければ正式には認められないからな。


それそれ、それを得る為に先の大王オオキミと皇子を…

おいっ!それを言ったら俺達の首が飛ぶぞ!

けっ!偉い人達ってのは権力が好きだよなぁ。

そうして燃やして何もかも無かったことにするのさ。


盗賊を追う様に火が追いかける。

火の熱波は俺の所まで届いて焼け死ぬかと思っていると

ふーーっと気が遠くなって倒れそうになった。


倒れそうになりながら頭の中で盗賊の言葉を反芻して

これまでの歴史の流れが見えてきた気がした。


ふと隣を見るとシキが悲しそうに側に来た。

だがその姿は段々と薄く儚くなり徐々に消えていく。

消えそうになりながら


おかえり、ア…


そう言い残してシキの姿は無くなった。



パチっと目が覚めた様な感覚があって

周囲を見渡すと現代の風景に戻っていた。

少し離れた場所にに大坂城の天守閣が見える。


あ、戻ってきた!

あれは一体なんだったんだろう?


近くに歴史博物館もあるし今日は古代に思いを馳せようか。

アキヅにとって興味のある時代がまた1つ増えた様だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

万葉歌人はぼんやり生きたふりをしていた件 サクラ堂本舗いまい あり 猫部(ΦωΦ) @hinaiori

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画