めがね裁判

夏生 夕

第1話

これより、第27回裁判を始めます。

そこ!かずき、逃げないの。

ミケも!こっちいらっしゃいイタズラ小僧。今日もふかふかでかわいいな!!



まず証拠品を提示しますこちら。

見事にね、バキっと。見てこれ、右と左がさよならしちゃってるわけ。真っ二つってこのことよ。むしろ初めからブリッジで左右取り外せるタイプだったかと思うほど綺麗に割れてました。


ふぅん。『俺、関係ないです』って顔。

でも勝手にこんな風に割れる訳ありません。それは分かりますね?あなた達どちらかは関係なくないんですよ。一番分かってるのは犯人だと思うけど。

いま正直に名乗り出れば怒りません。


…いいでしょう。それぞれの疑わしい要素を挙げます。

まずあなたね、ミケ。

こら尻尾ぺしぺししない。かわいいな!


先ほど帰ってきたところ、ミケの「ぶにゃァ」なのか「ぐぎゃ」なのか、とにかく奇声を聞きました。もしやあの瞬間踏んだのでは?

大切な物で遊ばないでって言ってるのに。

怪我しちゃうでしょ。


対して、かずき。あなたは今まで散歩に出ていた。ミケが酒臭いの嫌がるもんね。つまり、それだけ、だいぶ、飲んだのね。

知らんぞそんなフラフラになって怪我しても。


心配なのに…本当は、眼鏡なんてどうでもいいんです。

ふたりを疑うより、信じたいのに…



グス、と鼻をすする私を興味なさげに見るミケ。

の、隣で和樹が勢い良く頭を下げた。


「俺、俺です!

出掛ける前、なんか踏んだなとは思ったけど暗くて。あれ、君の眼鏡だったんだなバキッて音してたし…

ごめんなさい!!」


やはりな。

やっとこさ白状して正座に座り直した和樹に、ミケが尻尾を叩き付けた。私の思いも乗せて。


「こんの酔っぱらい、ミケに罪をなすりつけようとするなんて!」


「いや勝手に勘違いしたのそっちじゃん!」


「だから早く名乗り出てっつったでしょ!」


つまらない言い合いにミケがあくびを寄越し去ろうとする。待てい。


「おやつの引き出し荒らしたのは、あなたね?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

めがね裁判 夏生 夕 @KNA

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ