めがね 【KAC20248】

KKモントレイユ

第1話 めがね 【KAC20248】

 僕は小学校三年の夏休み両親と母方の祖父母の家に泊まりに行った。

 自然に囲まれた祖父母の家は山や川が近くにあり普段体験できないことができて楽しかった。


「遠くに行かないでね」

 と母から言われたので家の近くで遊ぶようにしていた。

 近くの森に小さな神社があった。こんなところに神社があったのかと思いながら辺りを見回す。

 蝉の鳴き声と心地よい風。

 綺麗な神社の向こうに学校のような建物が見える。不思議に思いながら近くまで行ってみた。


 やはり学校だ。小さな校庭に鉄棒やジャングルジムがある。

「へえ」

 校庭に入ってみたが生徒はいないようだ。

 きょろきょろしていると、


「ハルオ君」

 と呼ばれた。

 僕はハルオじゃないと思いながら、声の方に振り返ると、眼鏡をかけた綺麗な女の先生がこっちを見ている。

「あら、ハルオ君じゃないの」

 先生は段ボール箱を倉庫に片付けているところだという。

「手伝ってくれると嬉しいな」

 と言われたので僕は手伝った。


「ありがとう。全部片付いたから帰れるわ」

 箱を倉庫に片付け終わると、先生は僕にジュースとお菓子をくれた。


 晩ご飯の時、その話をすると祖父母は驚いた表情で顔を見合わせ、その先にあった学校は何十年も前に火事でなくなっている。夢でも見たのだろうと言われた。


 父は明日行ってみようと、子どものような表情で言ってくれた。

 次の朝、僕は父と一緒に学校があったところへ行く。学校は神社の向こうにあった。驚いたことに神社は昨日とは別の神社の様に古びて寂しげだった。


 その先に学校の焼け跡があった。

 昨日、僕が見た学校だ。僕は驚いて辺りを走り回った。僕は昨日何を見たのだろう。

 気が付くと倉庫があった辺りに立っていた。足元を見ると熱で歪んだ『めがね』が落ちていた。


 帰って、もう一度、祖父に聞くと、倉庫で作業をしていた女の先生が一人逃げ遅れて亡くなったそうだ。祖父春男の担任の先生だったそうだ。


 僕のポケットに先生がくれたお菓子が入っていた。

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