第9話 エッチなお姉さんと始める異世界美容師ライフ


「それで? これはどこに向かってるんだ?」

「えっとねぇ、とりあえず近くにあるグラスランド? って街を目指してる」


 俺たちは今、移動サロンへと変形したcoloréコロレで街を目指していた。変形と言ってもcoloréコロレにタイヤが現れただけで、男心をくすぐるトランスフォーム的な変形ではなかったことが残念である。


「草原に囲まれてるからグラスランドなのか?」

「さぁ? 最近まで女神の国でだらだらしてた私が知るわけないじゃない。そんなことも分からないなんて馬鹿なの? それよりコロクサ? ハーブティーのおかわりとクッキー出して」

『了解しました』


 ティーナが待ち合いのふかふかソファの上でくつろぎ、厳選された桃のハーブティーと少し塩味の効いたクッキーを食べる。そうして口いっぱいにクッキーを押し込んで、「んーふー美味しい」と幸せそうな顔をしていた。


「何が『んーふー』だ! おいおいティーナさんよぉ! 自分の立場が分かってらっしゃるんですかぁ? コロクサもコロクサだ! こんなエッチな格好だけが取り柄のアホ女神の言う事なんか聞くんじゃありません!」

『ティーナもcoloréコロレの従業員として登録しましたので、私を使用する権限はあります。もちろん全てを使用する権限はありませんので、ご安心下さい』

「安心しろって言われてもなぁ……」


 ティーナに視線をやると、相変わらずエッチな格好で無防備にパンツを晒している。


 と──


 今更だがみなさんは「エッチな格好」と言われ、ティーナがどんな服装なのかの想像は出来ているだろうか?


 え? 分からない? 


 そうだなぁ……


 俺もあまりにもティーナの格好がエッチ過ぎて、上手く言語化は出来ないんだが……


 形でいえばボディコンシャスな灰色のミニワンピと言えばいいのか……ホルターネックタイプでバックレスで……素材もニットのような感じで……なんか編み編みもあったりなんかして……片脚なんかは黒い紐で縛り上げられて肉感的で……おへそも出てるんですぜ?


 え? それのどこが女神様っぽいって?


 いやいや旦那、羽衣ですよ羽衣。ストールって言えばいいのか……なんかそんな感じの透明でふわふわした物体が、ふわふわしながらも、そこはかとなくエッチな感じで絡み付いてるんですよ。ありゃ女神ですぜ女神。


 ん? 羽衣がなければただの痴女じゃないかって?


 だから言ってるでしょうが! エッチなお姉さんだって!


 ……とまあとりあえず、とてもエッチな格好だと思って頂ければ結構です。目を閉じてみなさんの脳裏に浮かぶエッチな格好が、ティーナの服装ということにしておこうではありませんか。


「はぁ……それで街に着いたらどうするんだ?」

「ぷぷぷぅー! さっきから拓海たくみは質問ばっかりだねぇ? このアースクールの女神であるティーナ様がいないとなんにもでき──痛っ! 痛いよ拓海!! ああっ! やめて! 足4あしよん字固じがためだけはぁぁぁぁぁぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙っ!!」


 とりあえずティーナに足4あしよん字固じがためをめながら質問を続ける。例によってパンツは丸見えだが、もはやティーナのパンツにありがたみなど感じない。もう少し恥じらいを持ってくれたらこちらもそれ相応の対応をするのだが、こいつはただのアホな痴女。見えそうで見えないの良さがまるで分かっていない。


「それでパンツ見せるしか取り柄のないティーナさんよぉ! 街に行って何をするんでしたっけぇ? どうか馬鹿な俺にご教授願えませんかねぇ……っと!」


 言いながら足4あしよん字固じがために力を込める。実はこの技、技をめているこちらも痛い。ギチギチと締め付ける度にこちらにも鈍い痛みが襲い、だがしかしそれがいい。


 え? キモい? お前はどこまでキモいんだって?


 うるさい! 適度な痛みは刺激になって気持ちいいだろ! あれだあれ。マッサージで痛気持ちいい的なあれだ。決してティーナの肉感的な足に俺の足を絡ませ、それによって訪れる痛みが気持ちいいと言っている訳ではない。


「あ゙ぁ゙っ! 痛いっ! 痛いってぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!! ご、ごめんなさい! もうやめて! やめ……あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙っ!!」


 困ったことにティーナがヨダレを垂らしてだらしない顔になってしまったので、とりあえず技を解いた。


「分かればいいんだティーナ」

「ご、ごめんなさい。でもなんで拓海の目が血走ってるの?」

「それは痴女のパンツに興味はないと言ったけれど、やっぱりパンツはパンツな訳で、結局はガン見しちゃうからだよ」

「そんなに見たいの? パンツが?」


 言いながらティーナが際どい姿勢でスカートを捲る。いいだろう。見せてくれると言うのであれば、じっくりと見てやらんでもない。穴があくほど見てやろうじゃないか!!


「え? ちょ、ちょっと見すぎじゃない? な、なんかそんなに見られたら恥ずかしくなってきた気が……」


 なんということでしょう。あまりにも俺が見すぎたせいで、ティーナが恥ずかしがっているではありませんか。そうしてスカートを押さえ、見えそうで見えない神々しい姿が──


「た、たまらん! たまらんですよこれは!! さあティーナ! もっと恥ずかしがるんだ! さあ……さあさあさあ……さあっ!!」

『マスターが知力120というのも怪しいですね。もう一度計測してみましょうか?』

「な、なんだよコロクサ! 今いい所なんだから邪魔するなよ!」

『いえ、お二人がアホなやり取りをしている間に、グラスランドに到着しましたので』


 そう言われて窓から外を見ると、そこには想像以上に大きな街が広がっていた。レンガの家々が整然と立ち並び、まるで中世ヨーロッパのような街並みだ。


「やった! 街に着いたんだ! とりあえず女神である私が話をつけてくるよ! ネイサン教の女神が来たとなればみんな大騒ぎで持て成してくれるんだから! 見てなさいよ拓海! 私の凄さを見せつけてあげる! ぷぷぷぅ! 拓海の泣いて敬う顔が今から目に浮かぶよ!!」


 ネイサン教とは? と思ったが、なんだかティーナのテンションが爆上がりして、勢いよく飛び出して行ってしまった。



***



 しばらくして──


 街の方から「痴女だ!」「公序良俗に反する変態が出たぞ!」「不敬にもネイサン教を語った痴女を捕らえろ!」と、グラスランドの兵隊さんらしき方々に追われ、泣きながら逃げ帰ってくるティーナの姿が見えた。


「よし! コロクサ! とりあえず逃げるぞ!」

『了解しましたマスター』


 そうしてグラスランドの草原には、ティーナの「置いてかないでよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」という、悲しい叫びだけが響いていた──



 ──第一章 エッチなお姉さんと始める異世界美容師ライフ(了)






✂✂✂✂✂ 作者より皆様へ ✂✂✂✂✂


ここまででプロローグである第一章は終了です。楽しんで頂けましたら幸いです。


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KACのお題で勢いで始めた連載ですが、書いていて楽しかったです(笑)


続きは不定期連載という形でゆっくり更新して行こうかと思っていますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


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鋏池 穏美

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美容師の異世界無双~BARで飲んでいたらエッチなお姉さんに絡まれて、気付けば大草原の真っ只中~ 鋏池 穏美 @tukaike

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