居酒屋バイト
ワシュウ
第1話 とりあえず生で!
大学の帰り、駅ビル2階の某有名居酒チェーン店でバイトしてた
しっかりしたイメージがあったのに、店内がめっちゃ臭かった
開店の2時間前に出勤するんだけど、いつも腐ったような酸っぱいような生ゴミみたいな異臭
俺はホール担当だからキッチンの何が原因が分からなかった。
食中毒とかマジで怖いな、とか思ってた
宴会とか合コンみたいなお客の電話も、予約を受けるたびに罪悪感抱くレベル
自分もこの店に食べに来た事が何回かあったけど、プライベートで来ようとは思わなくなった
開店する頃には焼き鳥とか仕込の匂いに変わる
その日はカウンター席に常連さんのおっさんが座ってた
(※今はタブレット注文だけど、コロナ前はお客の横に跪いてオーダーをとるスタイルの店だった)
「ご注文はお決まりでしょうか?」
常連「とりあえず生で」
「お通しはいつもの枝豆ですか?」
常連「おう…あんちゃん慣れてきたか?」
「はい、お陰様で」
常連「ここは強烈やろ?」
ギクッ
常連さんにはやっぱ悪臭バレてるんだな
「面食らいました。高校の時にバイトしてた飲食店は普通だったので」
常連「ここ、ようバイトが辞めんねん。兄ちゃんも無理せんときや」
やっぱり?
だってそれくらい臭いもんな
その日は常連さんが帰った後で、団体さんが来て忙しかった。
主婦の集まりかなんかで、閉店ギリギリまで帰らなくて片付けしんどかった
そこに空いたグラスをずっとペロペロなめてるモジャ髪のヤバい客がいてキモかった
見ちゃいけないけど見てたと思う
普通、店員に気づかれたらやめない?
ってか、誰も指摘しないの?主婦の集まりなのにハブかよ…
翌週、そのモジャ髪の変な客が単体で来た。
俺より後で入ったバイトの女の子が声かけて、何故かカウンターじゃなくてテーブルに案内してた。
しばらく何も注文してなかったけど、少しして何人か合流してたから、みんな揃うまで待ってたんだなと思った
その日は忙しくて、俺はバーカウンターのドリンク係だった
若社員「お通しの小鉢出して。それ違う、マヨとトリあえずに、マヨとチャーシューあえて」
その日も忙しく、気がついたら閉店時間だった
翌日、バイトの女の子から辞めたいと電話があった
俺が電話取ったんだけど、店長に代わるからと保留にしたら切れてた。
店長がかけ直して「せめて一月前に言うのが常識!」とかごちゃごちゃ言ってた
高校生バイトには居酒屋は辛かったんじゃね?
大体8時上がりなのに忙しいとか言って10時まで残業させてるしな
その翌日、若社員が辞めたいと電話してきた。
お前もかよー!
と思いつつ店長に代わるとまた電話切られて
かけ直した店長が「社員ならせめて3ヶ月前に知らせてくれないと!」
それから、あのモジャ髪の変な客をよく見かけるようになった
異様な出で立ちが目立つ、駅ビル内をフラフラしてた
お客さんに対して失礼だけど、気持ち悪いなぁ…
別の駅で偶然辞めた女の子に会った
俺に気づいて向こうから声をかけてきた
「あの店ヤバいです、みんな早く辞めた方がいいですよ」
辞めた言い訳でもするのかと思ったら、うーん…
「…ドタキャンみたいな辞め方は良くないよ?
君もお金貰って働いてるわけだし、責任持ちなよ」
「あっ…違うんです、変だと思ったらキッチンに入っていって、でも誰も声掛けなくて、それで気付いたんです」
電波入ってる子かな?
急いでるからって俺は話しを適当に切り上げて帰った
偶然は重なるもので、別の駅で若社員にも会った
俺に気付いて声をかけてきて、そしてバツが悪そうに
「急に辞めてすいません…でももう無理ですボサボサの髪の女が店をうろついてて…気持ち悪くて
い、家にまでついてきて、お祓い行ったらその店はすぐに辞めたほうがいいって…」
ガクブルしながら顔面蒼白で俺を見てた
その日の夜は、家族がみんな出かけてて家に俺一人だった
風呂入って部屋で明日の講義のレポートまとめてたら…背中に違和感が
誰かが見ている?いつの間にか部屋に入って来た
あれ?家に今俺一人だったよな?
全身悪寒が走る
『い゙ぃ゙ぃ゙ー…ギィー…、してぇ…』
バッと振り向くと誰もいない
でも確かに何かいた
お祓いとか信じてないけど、俺も近所の寺へ
住職「お祓いはするが、根本原因は取り除けない…すぐそのバイト辞めなさい。次は道連れにされるぞ」
マジかよ!あんな居酒屋辞めてやる!
とか思ったけど俺までドタキャンで辞めるのは悪いよな。
今入ってるシフトで辞めたいと伝えたら
店長が俺に社員にならないかと提案してきた
丁寧にお断りして、月末まで働いて辞めた
俺が辞めて1年後くらいに食中毒出してた
今はビルごと解体されて全部無くなった
あれは何だったのか…
END
居酒屋バイト ワシュウ @kazokuno-uta
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