愛妻弁当【意味が分かると怖い話】
海音まひる
愛妻弁当
どうしたんだろう。
今日は、いつもの気持ち悪いお守りが入ってない。
俺の妻は、厨二病だ。
とりわけ、黒魔術に凝っている。
家でも、すぐ儀式をするからと言ってリビングに魔法陣を描いたり、悪いことがあればお清めと言って塩をまいては魔導書の呪文を唱え出したり、やりたい放題だ。
それだけなら俺に関係ないから構わないのだが、彼女は毎日決まって俺の弁当に、十字架のような形をした、不気味な銀色のお守りを入れてくる。
聞けば、これは弁当が悪くならないようにする魔術らしい。
それくらいなら、弁当が旨くなる魔法でもかけてくれよと頼んだが、
「やあねえ、一つのものに二つ以上の魔術をかけることはできないのよ」
と肩をすくめられてしまった。全く、そんな常識みたいに言わないでほしい。
そんなわけで、俺の弁当にはお守りが入っているのが普通なのだが、どうしたわけか今日はそれがなかった。
うっかり入れ忘れたのだろうか。
まあ別に、気にすることではない。むしろ、よくわからない黒魔術とやらがかけられていないと思うだけで、せいせいする。
弁当を食べながらスマホを見ていると、サチコから連絡が来ていた。
『ねえねえ、電話してもいい?』
『急に声聞きたくなっちゃった』
『ダメかな?』
サチコに電話をかけるため、外に出る。
寒々とした風が吹いていて、コートを着てこなかった俺はぶるりと震えた。
コール音を鳴らす。一回、二回。しかし、いつまで経っても彼女は出なかった。電話が勝手に切れる。
おかしいな。またかけ直す。コール音が、一回、二回。
愛妻弁当【意味が分かると怖い話】 海音まひる @mahiru_1221
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