このごろクラスに流行るもの
烏川 ハル
「まいっちゃう」なんて言わない先生
リバイバルブームという言葉があるそうだけど、これもその一種なのかな?
私たちのクラスでは最近、古い遊びが
もちろん、やるのは男子ばかりで、私たち女子は被害者側。迷惑な話です!
お母さんに聞いてみると、スカートめくりが一番
そんな迷惑な遊びを復活させて、クラスで
いずれにせよ、それは私たち女子をターゲットに始まって……。でも、すぐに標的は変更されました。男子たちは、担任の
ちょうど今も、私の目の前で……。
「チッ! 今日も『トリ会えず』か」
「また失敗だぜ! 明日こそ……!」
きっちりスカートを押さえた東風間先生の横を、男子二人が走り去っていきます。
鉄壁の防御に阻まれて、スカートめくりに失敗したようです。
「こら! 廊下を走っちゃいけません!」
二人の背中に、東風間先生が注意を投げかけますが、注意はそちらだけ。「スカートをめくるな」とは言いません。
まあ実際にはスカートまで手は届いていないし、彼ら二人の発言の中にも直接「スカートめくり」を意味する言葉は含まれていませんからね。もしスカートめくりの方を注意されても、きっと二人は「そんなことやってない」と返すのではないでしょうか。
ちなみに、男子たちが直接「スカートめくり」と言わないよう、彼らの間で取り決めたのが『トリ会えず』。いわゆる隠語なので、本来ならば仲間同士でしか通じないはずなのに、もう私たち女子の間にまで知れ渡っています。
この『トリ会えず』という隠語が成立したきっかけは、東風間先生のパンツに関する噂でした。
東風間先生は年甲斐もなく、くまさんパンツみたいな動物プリントの下着をはいている。ただしクマではなくトリ、それも青い鳥のプリントが多いらしい。「幸せの青い鳥」の逸話に
そこから「
問題は、東風間先生のパンツの噂です。
あのしっかり者の東風間先生がそんなパンツをはいているなんて、ちょっとイメージできませんし、実際そんな姿を目撃した者は、クラスの女子の間には一人もいません。
きっと根も葉もない噂だろう。私たちは最初、そう思っていましたが、ある時ひょんなことから、噂の
なんと、それは東風間先生本人だったのです!
スカートめくりの矛先を生徒から自分自身へと変更させるために、彼女が作り出した噂でした。
自分自身を狙わせるのは「身を挺して」というよりも、防御に自信があるからでしょうね。
そうとも知らずに、いつまでも無駄に東風間先生のスカートを狙い続ける男子たち。やっぱり彼らは、私たち同い年の女子から見ても、とっても子供ですね!
(「このごろクラスに流行るもの」完)
このごろクラスに流行るもの 烏川 ハル @haru_karasugawa
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