見つかるよ、あなただけのハローワールド。

別の世界に行きたいと願ったことがある。失ったはずの大切なあの人が今でもそばにいる、こことは違うパラレルワールドに。なぜならこの世界は一直線で、僕の行く先にはゴールなんてないと思っていたから。でもこの小説を読んで、僕は自分の間違いに気付いた。世界は直線ではなく円だった、円環していた。

小説の主人公茜も、様々な出来事を通して心を巡らせていき、そして自分が還るべき場所に戻っていく。母親と一緒に回った観覧車の乗降口が同じ場所であるように、絵本の中の女の子が旅の果てに一周して元の場所に帰るように。茜という名前も、夕暮れと朝焼けという二つの意味を持つ希望の循環。そしてその円環の旅を助けてくれるのは、皆と関わろうとする少しだけの勇気。

お互いの悲しみを持ち寄りながら、自分だけのハローワールドを探していく旅。その存在を教えてくれたこの小説に、僕は心からありがとうを言いたい。そこがあるとさえわかっていれば、回り道をしながらでも少しずつ歩いていけるから。そしていつかあの人に会えたなら、きっと。

ハロー、久しぶり。どうしてた? 僕の方はさ…

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