デッドエンドサバイバル

影月

第1話

あと少しでこのステージもそろそろクリアだな。

一人個室に籠って浸っていたゲームの終わりを感じながらプレイを続けていく。

今いる場所は本来ゲームではなく自習をする場所だが完全防音、電源完備に簡易的ではあるが横になれるベッドまである。

部屋の広さもそれなりの広さがある空間で圧迫感も少ない。

それに利用が終わると部屋は一時的に掃除が終わるまでロックがされる仕様であるため利用する前から汚い部屋に当たる心配もない。

つまり自分の部屋と違って汚した後の心配をしなくていいのもこの個室の利点である。

考えれば考えるほど誰かと過ごしたい理由でもない限りここに来ない理由も浮かばない。

そんな訳で今日も一人で過ごしていた。

ゲームがとりあえず一段落したのでネットに切り替えて何か面白そうなニュースでもあるかホームページを開こうとしたときだった。


ネットワークエラー 現在このデバイスはネットワークに接続されていません


無機質な画面が表示されて改めて電波状況も確認するがいつの間にか回線も来ていないようだった。

それでも何度か画面を更新してみるが状態は変わらなかった。

「おかしいな」

もしかしたらこの個室だけ一時的に電波の通りが悪くなっているのかもしれない。

そう思ったので一旦荷物をまとめて別の個室に移ろうと外に出る。

ついでにトイレにも行っておこうと広めの通路(廊下)まで戻ると窓の外がいつもより暗くなっている気がした。

「なんだ曇って来たのか」

傘持ってきてないな。

そう思ったのも束の間で改めてよく外を見ればそれは曇っているのではなく防御壁とよばれる災害時やテロ等に備えて今いる施設などを外部から孤立させるために出来た装置が何故か今稼働していた。

「初めて見た・・じゃなくてなんで・・・」

言葉を失ってふと先ほどネットワークに接続できなかったのはこれかと思い当たる。

試しにその場で接続を確認するとやはり繋がっている様子はなかった。

それにいつもなら廊下にはそれなりに人がいて騒がしいはずなのに今は個室に居るみたいに静かだ。

防御壁が作動しているという事はつまり何かしらの異常事態がこの施設で起こっているという事なのだろう。

だが、自分が気付かない間に他の利用者は避難したとでもいうのだろうか。

しかしそんな知らせなら個室に居ても通知されるはずでそれを見逃したのか。

とそこまで考えて改めて周囲を見ればちゃんとまだ人はいた。

「・・・なんだ居るじゃん」

そう思えたのも束の間で見える範囲の人間が何故かほとんど微動だにしていないような気がした。

それはまるで時間が停止しているかのように。

今が非常時であるならば本来この場はもっとパニックになっていてもおかしくはないはず。

なのにも関わらず現場は異常なほど静まりかえっている。

不意にこれは大袈裟な悪戯の類なのだろうかと考えてみるがただの一般人である自分に対してここまで大袈裟な事をする理由は思い浮かばない。

それにこの辺にいる奴らの多くは当然顔見知りでもない。

訳が分からないままその場に立ち尽くしていると外の方でヘリが飛んでいる風切り音が聞こえたと思ったらどこかの窓が派手に割れる音が響いた。

「なんだ」

慌てて窓を開くと黒色に装備を固めた特殊部隊みたいなのが外から少し上の階に突入したのと別部隊がロープを伝って下に降りて入口から入っていくのが見えた。

ヘリも民間や報道で飛んでいるモノではなく恐らくは軍用みたいなヤツがゆっくりと施設から離れていく姿が確認できた。

そして暫くして響き渡ったのは激しい銃の音。

もしかしてこの施設でテロでも起きたのだろうか。

先ほどまでの静けさを吹き飛ばすかのように聞こえ始めた銃の音に思わずそう考えたが仮にそうだとしてもいきなり銃を撃つのだろうか。

それに音も離れているにしてはやけに大きく聞こえる気がするし銃も無差別に撃っている感じがするのは何故だろう。

そして、こうまでなっているのに何で自分以外誰も未だに反応が無いままその場で佇んでいるのか。

これはまるで・・・

そこまで考えてようやく一つの可能性に気が付いた。

これはまさか自分が生まれる少し前に流行ったというゾンビ化というやつではないのだろか?

当時どんな風に騒がれたまではあまり詳しくは知らない。

だが、ゾンビという症状についてはいくつか覚えている事がある。

一つは外部からの接触が無い限り動かないという事。

次に仮にこれらが本当にゾンビと化しているのであれば不用意な接触は避けた方がいい。

ゾンビ化すると力の加減をしなくなるらしく触れた相手に対して防衛本能が働いて過剰な攻撃を受ける可能性があるとか読んだ記憶がある。

ひとまずそこまで考えてはみたものの結局進むのなら避けて通るしかないという事が分かっただけだった。

特殊部隊が突入してきているみたいではあるがこのままこの場での救助を待っていればいいのかそれとも自分からも向かうべきか。

そう考えて辺りをちゃんと確認すれば結構絶妙な距離感でゾンビ(仮)が点在しているのが見て取れる。

これらを避けて階段まで行きそこから部隊がいる階まで・・・

そう考えながら左右をみる。

何もしなければ何もない・・はず。

知識として分かっていても実際に目の当たりにするこの状況はその場で佇んでいるだけでもかなり不気味である。

それにこれが本当に自分が知っていた知識と全く同じ保証はどこにもない。

もしかしたら何も無くても急に動き出してこちらに襲いかかってくる可能性は捨てきれない。

「よし・・」

とにかく当たりさえしなければいい。

気持ちをそっちに切り替えて広く開いたスペースを確認し人との距離にいつもより気を使いながら歩き出した。

何とか無事にぶつかる事無く階段までやって来たが当然そこにもまばらに人がいる。

思わず深く息が出たが階段はバランスにも気を付けないければならないしここでゾンビ(仮)に暴れられたらそれだけで危険なのは言うまでもない。

「いくか」

そう言って階段を登ろうとした時だった。

下の階から勢いよく誰かが登って来ていたようで「どいたどいた」と叫びながらこちらに近づいていた。

上に行こうとしていたのをやめて声がした下が気になったので階段の手すりから顔をだして確認してみると、

「え」

あっけにとられたのは既に何体かのゾンビに掴まれたり乗らたりしているのも物ともせずに階段を上がってきている人物が目に飛び込んで来たからだった。

とりあえず自分以外にもこの状況に巻き込まれた奴がいたことに若干の安堵を感じたが、

「ここらでいいか」

そいつがそう言って踊り場まで登ったところで立ち止まった。

何をするのか固唾をのんで見守ると手にしていた筒状の何かに電源を入れた。

それはレーザーのような光をだして一定の長さで固定された。

「わるいね」

それを振る前にそう短く呟くと容赦なく自分に襲い掛かっていたそいつらに切りかかって切り伏せてしまった。

その一瞬で辺りに何かが焼けた嫌な匂いが広がる。

思わずそれに顔をしかめるが切った奴の顔は何故かフルフェイスをしていたので分からない。

「おや・・・人がいた」

顔は覆われて隠れていたのに視線が合ったのは気のせいではないと思った。

直ぐにこちらに向けて攻撃するつもりは無いのかこちらに気づきつつも手にしていたレーザーはノイズを残して消えた。

「侵入者・・・には見えないな」

こちらをしっかりと見据えてまるで値踏みするように考え込んでいる。

「ここの利用者・・・うーんでも見た感じなんで無事・・・」

だが、確かな答えにはたどり着けずにどこか判断に困っている感じが滲んでいた。

「えっと、何がここであったんですかね」

もしかしたら何か知っているのではないかそんな淡い期待を込めて質問をする。

「何もしらないってか」

フルフェイスはやはりこちらをどう判断するか悩んでいる様子である。

「あなたは何かご存じないですかね」

それに気圧されながらもなるべく失礼のないように気を付けながら質問を続ける。

やがて何も答えずに急にしゃがみ込んだと思ったら何かをこちらに投げてよこした。

一瞬、爆弾なんかの危険物かと思ったがそうではなくそれらとは別の危険物だった。

「ひっ」

それを認識して思わず変な声が漏れた。

投げてよこしたモノそれはたった今切られた人の腕だった。

「それが今ここで起こっている全てだ」

傷口が焼けてはいるが当然完全に焼いてある訳でなないのでその切り口からは赤黒い血が床に広がってきている。

そしてさっきもした匂いが改めて漂った気がした。

ただその答えの意味はさっぱり理解できない。

「ここに居ればいずれお前もそうなるってことだよ」

続いた言葉に氷付くのを感じて相変わらず顔は見えないのにその奥では笑っている気がした。

こいつ、もしかしたらかなりヤバい奴なのかもしれない。

そう思って少しだけ後ずさった。

徐々に銃撃の音も近づいてきている。

いや、あっちは正規の部隊のはずなのでそちらに保護を求めればいいのでは。

結局、初めの考えに立ち戻っていた。

「ちッ、こんなとこで時間食った」

しかしフルフェイスも銃撃が近づいているのに意識がいったのか少しだけ苛立った様子で顔は変わらず見えないがこちらを睨んでいる気がした。

「お前に一応聞いておく。あいつらの方に行くつもりか」

アイツ等と言われて直ぐにそれが何を聞いているの理解できなかった。

「アイツ等ってなんだよ」

なのでそのまま聞き返せば当然そんな事も分からんのかと言いたげな気配を一瞬だして、

「ここでいま銃をぶっ放している奴らの事だよ」

ここまで言わないと分からないのかと呆れた様子で続けた。

「あれって政府の部隊じゃないのか」

特に何の疑いもなくそう思っていたがもしかしたら違うのだろうか。

「一応な。でも、あれは誰かを助けるために派遣された訳じゃないからな」

きっぱりとそう言い切ったがそれは一体どこから仕入れた情報なのかそして何故それを知っているのかますますフルフェイスの正体が怪しく思える。

「それは確かなのか」

「信じても信じなくてもいいぜ」

そこはまるでこちらを試すかのように言ってゆっくりと階段を上り始める。

自分はどうするか迷った末に警戒して少し下がったのがまずかった。

「あ・・」

今までさんざん注意していたが後ろにはゾンビ(仮)が立っていた事をすっかり忘れてしまっていた。

あ・・死んだ。

腕が降りあがるのを見ながら結局こうなるのかとゾンビ(仮)の攻撃に一応備えて目を閉じて身を固くした。

だが、攻撃は来なった。その代わりに、

「死にたいなら他でやれ」

いつの間にか階段を上がりレーザーで襲い掛かっていたゾンビ(仮)を切ったフルフェイスの声が飛んできた。

言葉はともかく助けてくれたことに驚いた。

自分から助けた割に不機嫌そうにレーザーを切るとフルフェイスは改めて近づいてきてる銃声に気が付いて、

「隠れるぞ」

そう告げるなり今度は強引に腕を掴まれて上に連れていかれる。

特に抗う事もせずにそのままついて行くと丁度部隊がいると思われる階を過ぎてその一つ上の踊り場の所まで来て体制を低くした。

「やつらは上には来ないからここなら安全だ」

やはり訳知りでそう言い切ったあとついに部隊が階段にやってきた。

「お前は見るな」

激しくする銃声の音にかき消されながらそう告げるなり顔を思い切り地面の方に向けられた。

その間もまるで嵐のように激しい音が続いてそれはゆっくりと遠ざかっていくのが分かった。

それから耳鳴りが残って周りの音が遠くなったころようやく頭の拘束も解かれた。

「よし行ったな」

首が若干痛むのを感じながら改めて下を見るとそこはただただ赤く染まっていた。

「だから見るなって」

そう言われて無理やり後ろを向かされたが既に見てしまった後である。

無数の死体とそこから流れ出て地面や壁が赤く染まった現場を。

「言ったろあいつ等は助けに来た訳じゃないって」

改めて言われたその言葉をもう疑う気にはなれなかった。

「あの部隊はじゃあ何のために・・・」

助けるためではないのなら何をするために派遣されているのだろうかすでにその答えは目の前に突きつけられている気はしたがフルフェイスがそれを確定させる。

「そんなもん決まってるだろ取りこぼしのないように殲滅するためだ」

その言い方と初めに聞かれた質問が重なる「あいつらの方に行くつもりか」その答えとはつまり、

今この場において助けは来ないという事なのだろう。

つまり、初めから助けはなかった。

「これってもう助からないって・・」

外部から切り離され国から派遣された部隊は救助目的はないのであれば答えはもう出ていると言っていいのではないのか。

フルフェイスは初めからこの状況をよくわかっている感じがしたのでもしかしたら自分の知らない脱出方法を知っているのかもしれない。

「どうだろうな、五分って所かな」

そんな淡い期待はかろうじて繋がっているみたいだった。

「行くぞ」

いつの間にか一緒に行動する事になったのかそう声を掛けられてそれに従わない理由もなかったので特には聞き返すこともなく後に続く。

フルフェイスが目指していた場所はどうやら施設の屋上で鍵のかかっていたドアは例のレーザーでノブごと焼き切って外に出た。

そこで改めて防御壁の大きさを目の当たりにしたがあれを超えるのはどう考えても無理だと思えた。

防御壁の高さは基本、中の施設より高めに設定される事が前提のため簡単には入れいないし中からも当然出れない設計である。

それに建物からもそれなりの距離があるので当然ここから飛び移るなんてことも不可能である。

で、肝心のフルフェイスは外に出てからはしきりに辺りを見回して何かを探している。

もう自分たちの脱出は絶望的なのだろうと感じているがそこでふとと部隊はどこから脱出するのだろうかと疑問が浮かんだ。

もし回収しに来るのであればそれにどうにか紛れ込むことができれば脱出できないのだろうか。

「なあ、部隊ってどうやってここから撤収するんだ」

先ほど上には来ないと言っていたので屋上ではなく下の広い開けた空間のどこかで回収するつもりなのだろうか。

「あれは使い捨てだぞ」

しかし答えはまたしても耳を疑うものだった。

「え・・どうして」

驚きの余り言葉を失っている自分とは対照的に何かを見つけたらしいフルフェイスは足早に歩き出していた。

「気づいてたとは思うが武器だって旧式だったろ」

確かに音は大きかった。そうは思うがそれだけで断定できるのだろうか。

「それにこの施設は・・」

フルフェイスが更に言いかけたとき ビービービー とけたたましくブザーがフルフェイスから発せられた。

その音を聞いてすぐフルフェイスが上を見上げたので自分もつられて見上げてみると空がいつもよりもだいぶ白んで見え何より先ほどより少し気温が上がっている事にも気が付く。

「あれっはなん・・だ」

「レーザー砲に決まってんだろ」

半分答えは分かっていたがやはりそうなのか。

最早本当に打つ手なんて無い。このまま焼かれて終わるのだろう。

しかしこの状況になってもフルフェイスはすぐに視線を戻すと止めていた手を動かして何かをどけるとそこには旧式のバイが現れていた。

「これは使えるか」

そう呟いて状態を確認し始めたようだが残された時間はあと数分程度しかないと思う。

今更どうあがいてもここから脱出なんて不可能。

結局、銃殺されるか、撲殺されるか、焼き殺されるかの違いでしかなかった。

「レーザーを頭から受ければ痛みもないかなぁ」

ぼんやりと呟いた向こうでガソリンが添加してエンジンが回転を始める音が聞こえてくる。

どうやらまだバイクは使用できる状態だったみたいだ。

早速それに跨って一気にこちらに戻って来てそのままフェンスの方に走っていく。

そこでバイクをエンジンは切らずに止めてフェンスを下の隙間から抜けて今度はレーザーでフェンスを適当な長さで左右を切って支えを軽くレーザーで溶かしながらこちら側にけり倒した。

そして倒したフェンスの強度を上に乗って沈まないか確認するとこちらに戻ってきた。

「行くぞ」

「どこに」

「外に決まってるだろ、ここに居ても死ぬだけだしな」

清々しいまでにあっさりと言ったが自分には分からない勝算でもあるのだろうか。

このままいくと第四の選択肢として転落死がエントリーしただけではないのか。

「そうだとしてもそのバイクで飛んだとして届かないでしょ確実に」

高くそびえる壁を指して改めてその選択の意味を問うがどこか自信ありな様子で、

「良いから後ろに乗れ、時間もない」

しかも自分の分のメットは当然ない。

「迷ってる暇なんて無いぞ」

そう言って更にいつ用意したのか布を割いてひも状にしたモノを手渡される。

「それでお互いの体を縛ってくれ」

何でそんなことが必要か分からないまま受け取る。

ひもは有るけどヘルメットはやはり無いらしい。

そんな事を思いながら頭上のじりじりと迫る感じの嫌な暑さにもうどうにでもなればいいと半分やけになりならがら言われた通りお互いの体を胴体のところで縛ってみた。

「それじゃ行くぞ」

二人乗りになったバイクで一旦作ったフェンスのスロープから離れた距離に戻ってそこからまた一気に加速させていく。

勢い良く飛び出して壁から半分程度の距離でふわりと止まると今度は当然重力に従って落下が始まる。

「バイクは捨てるぞ」

そう声が飛んでとっさに前の体に改めてしがみついた。

それから直ぐの事、不思議と落下が止まった気がして目を背中からずらせば何故か目の前に壁があった。

「よし。やっぱ重いなお前」

そう言われて状況を確かめるとフルフェイスが両手にワイヤーを巻きつけていてそれが上の方に伸びて壁に張り付いて固定される事で自分たちが支えられているらしい事が分かった。

しかし、壁に来れたとてここから直ぐに脱出なんてできるのだろうか。

「これ、大丈夫」

「どーだろな、間に合わないかもな」

ここにきて少しだけ諦めた様子を見せつつもワイヤーをしっかりとたぐり寄せてゆっくりとだが上に進んでいる。

「あとは何とかこの防御壁のシステムにアクセスできれば・・」

それを聞いて、

「ネット切れてるからそれは無理でしょ」

この場から操作するには物理的には不可能でありそれを可能にするにはネットからのアクセスが必要である。

だが、それもリンクがあればの話。

「その言い方、もしかしてネットにアクセスできればどうにかできるのか」

変なところで話題に食いつくなと思ったが、

「一応」

そう答えてみたものの当然として正規のシステムにハッキングなんてしたことは無い。

「それじゃあ頼む」

「いやだから、そのネットが繋がってないって話ですけど」

前提としてそれが無いので出来ないと言ってるのにどうしろと言うのだろうか。

「コレは繋がってる」

そう言われても何のことか初め意味が分からなかった。

「・・・何です」

「だからこのメットは繋がる」

驚いて改めてそのメットことフルフェイスを見てもそうは思えない。

だが、それがもし本当なら・・半信半疑のままデバイスを起動させる。

次にフルフェイスと接続するためのデジタルケーブルを作成しようと思ったが、

「どこに接続用のポートが・・」

確認してみたがそれららしい場所は見えない。

「確か・・・」

どうやら場所に覚えがあったらしいフルフェイスからの助言をもとに場所がなんとか特定できたのでそこにケーブルを接続させる。

かなり古い規格ではあったが確かにネットには接続されているのを確認して、

「ちょっと重くなるかもしれません」

一応それだけ断ってから先ずはこの場での作業は難しいので精神ダイブで環境を移す。

「はあ?・・って・・・おも」

意識だけをデジタル空間に移動させて検索AIを起動させると防御システムまでの経路の調査を指示。

それから改めてレーザー発射までの時間を確認。

AIから調査と侵入経路が逐一アップされてくるのを整理してその中から一つ経路を絞るとアクセスを試みると特に弾かれる事無くシステムに侵入することができた。

余りにあっさりと事が進み怪しく思いもしたが今はそれを気にしている暇がないのでさっそく防御壁の解除が可能かを探る。

そこで分かったのは防御壁は一枚づつ作動させることも可能で番号も振られている事と壁全体に熱感知をするセンサーがあり不審と判断されれば迎撃として上部に配置されたレーザーが照射されるらしい事。

ただ後の二つは何故か今ちゃんと作動している様子はなくレーザーは照射されてこない。

システムを確認しても何故かそれがオフに設定されていることしか分からない。

だがこれで自分たちのいる壁の場所と番号が分かれば後は防御壁をそこだけ下げる事で脱出できる可能性が出てきた。

他の問題はやはり表示しているカウントダウンに間に合わせる事が出来るかどうか。

熱検知と壁の番号割り出しを既にAIに指示してあるが結果はまだ上がってこない。

それに外の状況もここからではよく分からないのでもしかしたら既に壁から落ちている可能性もあり得る。

そこにようやく検索結果が上がって来たので直ぐに指定された壁を一枚だけ下げるコードを実行させる。

これが上手くいけば本当に助かるのかもしれない。

だが見上げるカウントダウンの猶予もいよいよ迫っていた。

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