一ノ瀬さんと帰り道

 この日は一ノ瀬さんと帰り道で会ったため、雑談をしながら一緒に駅まで行きました。


 話題は自然と樹里亜さんの話になりました。2人してザ・老婆心(=おせっかい)をこじらせていました。


「そういえば、四郎さん(=私)はどんな人と付き合ってきたんですか?」


 不意に一ノ瀬さんから恋バナを振られました。困った。悲しい思い出しかない(笑)。


 私は昔から影のある、というかメンタルに問題を抱えた女性を惹き付けるよろしくない傾向がありました。平たく言えばヤバい女に好かれる性質があったのです。


 最初の彼女は背中一面に和彫りの刺青がありました。


「これ、オシャレなの♡」と言っていましたが、まあ嘘でしょう。2人目はネイルサロンの方に声をかけられて仲良くなったは良かったのですが、片腕が刺青で真っ黒になっていました。あなたは黒龍波でも放ったのでしょうか?


 3人目の方は刺青こそ無かったものの、左腕にリストカットの傷が大量にありました。これらの経験から私は長袖を着ている女性を信用していません。


 やめておけばいいのに上記の話をしましたところ、一ノ瀬さんはドン引きしていたかと思います。


「とにかく、俺はヤバ女にモテてしまうのだよ」


 知らずにフラグを張っていた私は、一ノ瀬さんの顔を見て「俺のトークで笑いを取った」と思っていました。今思えば私もなかなかヤバい奴でございました。


 駅に着いたので一ノ瀬さんとさようならをしました。のちにこの帰り道が命取りになっていたとも知らず。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る