闇堕ち樹里亜さん～闇の深いシンママに潰されかかった話～

突然やってきた終焉

　恐怖の気付きBOX攻撃はしばらく続きました。というかずっと続いていました。お昼の放送は毎日のように流れ続け、私の評判はすっかり極悪人になっていました。

　いつまでこんな日が続くのだろうと思っていたら、その終わりは前触れもなくやってきました。

　ある日、コールセンターで樹里亜さんが今までにないほどのピッコロ顔になっていました。後から仕入れた情報によると、どうも「気付きBOX」に私の悪口を書き込みすぎたせいで女性の上司から怒られ、逆上したようです。

　本当に悪霊でも憑いてるのかってぐらいすごい形相（ぎょうそう）でしたので、元プロボクサーの私でもビビりました。

　樹里亜さんは鋭い眼つきで「体調が悪い」と嘘を吐いて早退し、それが彼女を見た最後の瞬間になりました。去り際に見せた昏（くら）い目は今でも忘れられません。

　後から聞いた話によると、派遣会社と派遣先に私に関するクレームを恐ろしいほど出していたそうで、私自身も知らぬ間に素行調査をされていました。

　ですが本当に何もやっていなかったので一つも証拠は見つからず、樹里亜さんがとんでもない食わせ者であった事だけが分かるという罰ゲームめいた結果で調査は終わっていた模様です。

　後から仕入れた情報を総合すると、いつかに一ノ瀬さんと帰り道で恋愛の話をしたのが気に喰わず、あそこまでやってしまったようです。

　最後の方では気が付いていましたけど、彼女は私の事が好きだったみたいです。ですが、不器用過ぎて好きな人に石を投げてしまうタイプの方だったようです。

　恐らくかわいいかわいいとチヤホヤされて育ったので、自分から好きだと言う事が出来なかったのでしょう。まあ、次の人でその反省は活かして下さい。

　どうやら私が運命の人に出会えるのはもっと先の話のようです。

　　　【了】