トゥルースインザノイズ

藍田レプン

トゥルースインザノイズ

 はい、名前はY(こちらで仮名とした)です。

 お話する前に、除霊の仕方、教えてもらえますか?


 (以下、筆者の音声だけ欠落している)


 いえ、だってその、お寺とか神社に行ってもフィクションみたいに霊能力を持った住職さんや神主さんがいるわけないじゃないですか。それに自称霊能力者なんてみんなインチキか詐欺師で、高いお金をむしり取ることしか頭にないでしょう?

 でも、奇談蒐集家のあなたなら。たくさん実話怪談の本とか読まれていますよね?

 ですから、あなたが読んだ本の中で、一番『効きそうだ』と思ったやり方を教えてください。話はそれからです。


 はい、はい……(ここから突然収録された音声にノイズが入る。以下、ザーと表現する)

 (ザー)と(ザー)を一緒に、はい……それなら私にもできそうですね。帰ったら試してみます。


 それでは、私の体験をお話します。

 私の(ザー)は今地獄にいます。

 私は幼い頃から(ザー)に虐待を受けていました。(ザー)は私だけでなく、(ザーザーザー)にも暴力をふるう人でした。割れたガラス瓶で殴る、煙草の火を押しつける、歯が折れるほど顔を(ザーザーザーザーザーザー)今も体中に傷跡が残っているんですよ。見ます?


 そうですか。じゃあ続きを話しますね。

 それで、私は(ザー)と二人で(ザー)を呪うことにしたんです。

 呪いの方法は本で読んだものを手当たり次第。(ザー)と二人で試しました。

 (ザー)に(ザーザーザー)したり、(ザー)を一晩中(ザーザー)してみたり……

 それでね、呪いは効いたんです。(ザー)はそれはそれは無残な、死ぬのが待ち遠しくなるほどの苦痛をじっくりじっくり味わって、死んだんです。

 それで、化けて出るんですよ。死んでも私に付きまとっているんです。だから、除霊の方法が知りたくて、この話をあなたに提供する代わりに、この話をしようと思ったんです。

 本当にしつこいんですよ。朝から晩まで、ずうっと。私にしがみついて離れないの。


 え?

 (ザー)は地獄にいるのに、どうして私に?

 ああ、ごめんなさい。説明不足でしたね。

 私たちが呪い殺した(ザー)は地獄にいます。今もこれからも、ずっと地獄で苦しみ続けていますよ。

 私にとり憑いているのは、(ザー)を呪った(ザー)のほう。

 (ザー)が死んだ後、すぐに(ザー)も死んじゃいました。

 人を呪わば穴二つ、って本当なんですね。呪った相手の墓穴を掘るものには、必ず報いが訪れて、自分自身の墓穴も掘ることになる、って話。


 え?

 じゃあどうして私が生きてるのかと言えば、簡単ですよ。

 私は(ザー)をそそのかして、呪うふりをしていただけ。

 実際に(ザー)を呪っていたのは(ザー)だけだったから、私は死なずに済んだんです。

 あはははははははは、おっかしい!

 本当にそんなんだから(ザー)は(ザー)にもあんな(ざああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ)


 どうしてそんな目で私を見るんですか?

 私は何も悪くない。悪いのは(ザー)と……呪いの方ですよ。

 ああ、すっきりした。いつか誰かに話そうと思って、でも話す相手がいなくて。

 どうもありがとうございました。

 それじゃあ、今後も執筆がんばってくださいね。

 この話、絶対書いてくださいね。

 もし書かなかったら(ここで突然録音が途切れている)


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 先ほど寝起きにPCを起動したところ、上記の内容が収録された音声ファイルがデスクトップに存在していた。


 私には、このインタビューをした記憶も、録音した記憶も無いのだが。






























































(ザーーーーッ)

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トゥルースインザノイズ 藍田レプン @aida_repun

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