★1 無能令嬢の幸せざまぁ!! ~立場だけの無能と言われ婚約破棄された悪役令嬢ですが、封印の祠に何故か入れたので腹いせに壊してみたら前世の記憶と力が復活しました。今更媚び売ってきてももう遅い~


タイトル:無能令嬢の幸せざまぁ!! ~立場だけの無能と言われ婚約破棄された悪役令嬢ですが、封印の祠に何故か入れたので腹いせに壊してみたら前世の記憶と力が復活しました。今更媚び売ってきてももう遅い~

キャッチコピー:人呼んで『無能のタオイア』に隠された秘密とは!?

作者:朽木貴士

URL:https://kakuyomu.jp/works/16818093086857692268


評価:★1


【あらすじ】

「タオイア・グレスマ・エイジスフィ! この僕アルベルト・ゼ―ル・リングヒルは、今この時を持ってお前との婚約を破棄する!!」


『無能のタオイア』と人々から称される公爵令嬢タオイア。彼女は生まれ育った国、リングヒル皇国では異質な存在だった。皆が共通して金髪碧眼に白い肌なのに、タオイアだけが黒髪黒目だったのだ。それだけではない。その無能さも異質だった。皆が多少のスキルや魔力を持って生まれるのに、彼女だけはレベル上限1、所持スキル0、魔力0、なんていう状態で生まれてきてしまったのだ。しかも、彼女がどれだけ努力しても一切成長が出来ないというおまけつき。


何故貴女だけが? それは私のセリフです!!



【拝読したストーリーの流れ】

 本作は1話完結の短編小説です。



 「リングヒル皇国」の公爵令嬢である主人公「タオイア・グレスマ・エイジスフィ」は、婚約者である皇太子「アルベルト・ゼール・リングヒル」から婚約破棄を言い渡された。

 理由は「レベル上限1、所持スキル0、魔力0という無能」だからだ。


 更に「セレーナ」という侯爵令嬢にイジメを行ったという冤罪を掛けられ、おとぎ話に出てくる魔女「ソフィア」が封印された魔の森へと流刑にされてしまう。


 腹いせに封印を壊してしまうが、実は「タオイア」は「ソフィア」の生まれ変わりで……、といったお話でしょうか。



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 タイトルは、超長文の説明文タイトルですね。ここまで長いタイトルは流石に少ないので「目を惹く」という効果は見込めると思います。


 内容は「追放ざまぁ」である事と、流行りの「祠壊し」である事が分かります。

 「説明文タイトル」としては非常に良く説明できていると思うのですが、問題点は「オリジナリティが感じられない」というところでしょうか。


 また、あまりにも長文ですのでタイトル全文を読む読者も限られると思います。

 他作品との差別化を図る為に、タイトルの冒頭に「本作唯一のオリジナリティ」があれば良かったと思いますね。(残念ながら、本作にオリジナリティはありませんが)



 続いてキャッチコピーですが、こちらは「主人公に秘密がある」という事を伝えていますね。煽り文句としては悪くないと思います。


 問題点としては、作品を読んでみると「大した秘密ではない」という事ですね。

 キャラ目線ならともかく、読者視点では「主人公が大人物の生まれ変わり」など隠されるほどの秘密ではありません。

 ここに期待して読み始めた読者は落胆するのではないかと思います。


 また、キャッチコピーの色を黒にするのは避けた方が無難だと思いますね。(主人公の髪や目の色に合わせているのかも知れませんが)

 理由は、単純に目立たないからです。



【キャラクターの批評】

 キャラですが、テンプレ的なストーリーに加えて短編という事もあってか特に魅力的なキャラはいませんね。

 全員が「最低限の役割」しかなく、ありきたりな個性しか持たされていないように感じました。


 敵役となる王や皇太子は完全にテンプレです。

 主人公を追放し、その後にざまぁをされる為だけの存在だと感じました。

 また、その為に知能が低下させられているようにも感じます。


 主人公の前世である魔女は、主人公に力を与える為のキャラですね。

 性格に多少の個性は感じましたが、基本的に主人公の為だけの「都合の良い存在」に感じます。


 魔女の恋人というキャラもいますが、これは「主人公へのご褒美」ですね。

 「不遇な主人公にパートナーをあてがう為のキャラ」としか映りませんでした。


 ちなみに【拝読したストーリーの流れ】で紹介した「セレーナ」というキャラは登場しません。皇太子が主人公を糾弾する理由付けの為だけに出てきた名前です。


 彼らに比べれば主人公は幾分かマシではありますが、それでもやはり魅力は無いですね。

 そのように断言する大きな理由としては「彼女が特に何もしていない」という事が挙げられます。


 主人公は「無能」である事から僻地の領地を与えられますが、そこでは「領地運営はしなかった」とあります。(「部屋から出る事は許されなかった」ともありましたが)

 そして追放されて、魔女の力を受け取っただけですね。反撃の際も、結局「力」を振るったのは彼女自身ではなく前世の魔女の意志という描写です。


 「無能を何とかしようと努力した」とは書かれていましたが、文字通り「そう書かれていただけ」でしたので、その努力は読者には伝わりません。


 作中で主人公が自分だけの意思でした事と言えば「腹いせに魔女の封印を壊した事」と「仕返しの為に王と皇太子を待ち伏せた事」くらいでしょうか。

 その仕返しも魔女が行ったようなものでしたので、主人公に好感を持つのは難しいですね。



【文章・構成の批評】

 文章自体は読みやすかったですね。大きな問題点はなかったと思います。

 ただ小さな点はいくつかありましたので指摘させて頂きます。


 まず本作の地の文は比較的硬めの三人称で書かれているのですが、時折「主人公の心の声」や「擬音語」が入り、それらが文章の雰囲気の統一感を損なっていると感じました。

 1つ例文を引用させて頂きます。

――――――――――――――――――

 そう。この魔の森は、魔女の怒りに触れ魔物と化した獣が徘徊する、呪われた森なのだ。決して近付いてはならない! その筈だった。


「私……このまま、死んでしまうのかしら」


 嫌だ! このような事態に陥っても、タオイアは不思議と生を諦める気にはならなかった。

 とはいえどうしたものかと考えていたその時、がさっ! と音を立てて茂みから魔物が現れた。口から火の粉を散らしながら、獰猛どうもうに牙を剥き出しにして、赤き瞳をギラギラと輝かせグルルと唸るソレの正体は、黒い体毛に赤いラインが至る所に走った禍々しい狼であった。

――――――――――――――――――

 時折出てくる「主人公の心の声」と、それ以外の地の文の落差が激しく感じます。また擬音語も浮いて感じました。

 対処法はいくつか考えられますが、「地の文と、それ以外を明確に分ける」か「地の文を軽い表現にして落差を少なくする」のどちらかの方が良いと思いますね。


 また「子供には聞かせなくてはならないと法律で定められている寝物語」というものが文中に書かれているのですが、こちらも「子供に聞かせる寝物語」としては硬く感じます。

 童話や絵本のような文体に変えた方が良かったと思いますね。


 忘れかけていましたが、良かった点も褒めておこうと思います。

 「主人公の名前を利用したアナグラム」は頑張って書かれていますね。本文から引用します。

――――――――――――――――――

TAOIAタオイア GRESMAグレスマ AGESPHIエイジスフィ


Iアイ AMアム GREATSAGEグレートセージ SOPHIAソフィア(私は大賢者ソフィアである)

――――――――――――――――――

 あくまで「頑張った」であって「良く出来ている」とは思いませんが、努力は素晴らしいと思います。(自動生成ツールを使われた可能性もありますが)



 それでは構成ですが、まず文字数が目につきますね。本作は1話完結ですが、その文字数は14,912文字もあります。

 私も同じ過ちをしてしまった事があるのですが、1万文字を超えるようなら2、3話に分けた方が良いと思いますね。ほとんどの読者は「分けた方が読みやすい」と答えるのではないかと思います。


 それ以外の構成は問題は感じませんね。

 「追放ざまぁ」という、こなれたストーリーをテンプレ通りに進めるものでしたので難しくはなかったのだと思います。


 問題は感じませんでしたが、本作を読んで「作者には構成力がある」とは判断はできませんでしたね。



【ストーリー・設定の批評】

 ストーリーは「追放ざまぁのテンプレ」に、流行りの「祠壊し」を足しただけのものですね。見るべき所は何もありません。



 そして設定ですが、個人的には「追放ざまぁ系の作品には雑な設定が多い」と感じるのですが、本作もその例に漏れませんね。

 全て挙げるとキリがないので1つだけ、序盤の「雑さ」を指摘させて頂きます。


 主人公は「レベル上限1! 所持スキル0! 魔力0! あまりに無能すぎる!!」と皇太子から言われて婚約破棄されます。

 どうやらこれらはこの世界は重要なようですね。(これらが貴族の仕事にどう影響するのかは分かりませんが)


 そしてこれは主人公の「生まれつき」のものらしく、家族はおろか、使用人からも陰口を叩かれていたとあります。【キャラクターの批評】でも書いた通り、親からは僻地に追いやられて軟禁状態だったようですね。


 あの……なぜ主人公は皇太子と婚約する事になったんでしょう?

 「昔から」という記述もありましたし、いわゆる「無能」だったのは幼い頃からだったのではないかと推察されます。(作中の主人公の年齢は分かりませんが)


 作者さまには申し訳ありませんが、このように「追放ざまぁをする為だけの設定」を見せられると続きを読む気はなくしますね。(私個人の意見ですが)

 「追放ざまぁをする為に考えた設定」だとしても、少しくらいは整合性を取る努力くらいは見せて欲しいものです。



【総評まとめ】

 まとめますが「ただのテンプレコピー作品」です。

 文章だけは比較的まともでしたので★1とはしましたが、個人的には見るべき所は何もない作品ですね。


 「練習で書いた」というのなら、本作を書かれた意味はあると思います。

 ですが私にはそれ以上の評価はできませんね。ただのコピー作品を読んでも感じるものは何もありません。

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