★0 ウィンド・マスターズ 異色の風使いたち


タイトル:ウィンド・マスターズ 異色の風使いたち

キャッチコピー:わたしはウィンド・マスターになる。強くなったらきっと、帰れるよね?

作者:駿河 晴星

URL:https://kakuyomu.jp/works/16818093081710116787


評価:★0


【あらすじ】

藍色の目を持つ咲羅(さくら)のひそやかな日課は、大桜に宿る精霊たちと話すこと。

黒の髪と目を持つ人々に囲まれて暮らす咲羅にとって、精霊たちだけが心の内を打ち明けられる唯一の存在だった。


ある朝、咲羅の暮らす村が魔物に襲われる。

異色の目を持つ咲羅は、魔物を呼び寄せた張本人ではないかと、疑いの目で見られる。

必死に否定する咲羅だが、皮肉にも村人たちの言葉を裏付けるかのように、突如として不思議な力に目覚めてしまう。


さらに、戸惑う咲羅の前に、異色の髪と目を持つ男たちが現れる。

そのうちの一人、翡翠の目を持つ男は、自分たちは風人という種族だと名乗った。


疲労困憊で倒れた咲羅が次に目を覚ました時、見知らぬ天井の下、風人の子どもたちが通う風子学園にいた。

勝手に連れてこられたことに怒る咲羅だったが、同い年の夕希と舞弥による学園案内を通じて、次第に風人の世界に興味が湧いてくる。


    ◯


一方、翡翠の男は、咲羅について調査を進めていた。

咲羅が暮らしていた村には、4年前に亡くなった前学園長の《結界》が張られていたのだ。


前学園長は何から咲羅を守っていたのか。なぜ学園に連れてこなかったのか。

翡翠の男は、前学園長の謎めいた死の真相に迫るべく、隠された過去の痕跡を追跡しはじめた。



【拝読したストーリーの流れ】

 本作のエピソードタイトルのナンバリングは「1-1」「1-2」といった表記でしたが、本批評内では「第1話」と言った風に呼称させて頂きます。



 藍色の目をした主人公「咲羅」は、精霊の声が聞こえるという能力を持っていた。

 しかし「咲羅」は、目の色の違いから迫害してくる村人たちはもちろん、愛情を注いでくれている両親にもその能力を内緒にしていた。


 毎日、山頂の大桜の精霊の元へ行く習慣を続けていた「咲羅」だったが、高校受験の前日に異変が起きる。

 育った村から火の手が上がっていたのだ。


 慌てて村へと戻った「咲羅」や村人たちを、怪鳥が襲う。

 「咲羅」は精霊の導きで風を操って、戦ったが力及ばず防戦一方となってしまう。


 そこに「咲羅」と同じく「異色の目」を持つ男たちが現れ、怪鳥を倒した。


 そして男たちの1人が「咲羅」を「異色の髪と目を持ち《才》を操る風人ふうじんという種族」だと言い、更に「風人の子どもたちはみな、風子かぜのこ学園という学校に通うことが義務」だと言ったのだ。


 「咲羅」の、思ってもみなかった高校生活が始まる……、といったお話でしょうか。



【タイトル・キャッチコピーの批評】

 タイトルは分かりやすいとは思うのですが……本文を読むと少し、イメージの乖離や語弊があるように感じてしまいます。


 まず「ウインド・マスターズ」という言葉ですが、本作の「特殊能力などの固有名称のネーミングや、全体的な雰囲気」が和風に感じます。(タグに「和風」ともあります)

 「ウインド・マスターズ」という英語の言葉とは溶け合わないように感じてしまいました。


 そして本文を読むと、どうやら「主人公以外は『風以外』の能力」を使うようです。(「火」や「電気」といった描写がありました)

 まだ設定の全ては分かりませんが、少し語弊があるように感じてしまいました。



 次にキャッチコピーですが、主人公の決意と、(故郷に)帰りたいという気持ちが現れていると思います。

 ただ、このコピーはあまり良いとは思いません。


 まず「読者は本文を読んでいない」という前提にはなりますが、まだ読者は主人公に感情移入はしていません。「ウインド・マスター」が何なのかも分かりません。

 分かるのは「帰りたいけど帰れない」という状況に、自信無さげに「帰れるよね?」という言葉です。

 これでは読者の「キャッチ」は難しいのではないかと思います。


 あくまで個人的意見ですが、キャッチコピーは「分かりやすく、強い言葉で断言した方が良い」と思います。



【キャラクターの批評】

 キャラクターなんですが、基本的にはそれぞれの役割や特徴が分かりやすくて良いと思います。

 しかし文章・構成・設定などに問題があり、キャラの魅力を伝える事が出来ていないように感じます。(これらについては後述します)

 ただ、それらの問題以外にも「キャラの心情など」に違和感を感じます。


 特に違和感が強く感じたのは「村の中での主人公の扱い」ですね。

 主人公は栗色の髪と藍色の目をしている事から、村人たちから忌み嫌われています。その為に、村が怪物に襲われると「主人公が呼びよせた」などと言われます。


 片や主人公の両親は(作中では父親は登場しませんが)、村の医者で「彼女をみな慕っており」とありました。

 そして義母は主人公の事を、実子と変わらない愛情を注いでいるように見えます。


 「どう考えてもおかしい」などとは申しませんが、強い違和感を感じます。

 たかが栗毛や濃い青目くらいでそこまで嫌うものかと思ってしまいますし、そこまで嫌っているのなら、その義母の事を尊敬したり慕うのは難しいのではないかと思います。



 あとは「村人が怪物を受け入れていた」という事にも強い違和感を感じます。

 精霊は主人公にしか見えないようですが、村を襲った怪物は村人にも見えているようです。

 ですが村人は怪物が襲ってきた事には驚いていても、怪物の存在そのものには驚いているようには見えませんでした。


 この世界では「怪物が普通に認知されている世界」なのでしょうか?

 もしそうであるなら、その説明を読者にする必要があったと思います。そうでないなら、村人の反応は不自然だとしか思えません。



【文章・構成の批評】

 文章ですが……「文章そのもの」は別におかしくはありません。

 言葉の意味も通り、文法もおかしくなかったと思いますし、誤字なども無かったと思います。


 ただし説明不足が多く、前後の文脈が繋がっていない箇所も多々あります。

 その為、状況を理解するのが非常に困難で読みにくかったですね。

 1例だけ本文から引用します。この文は、「主人公『咲羅』が義母『実幸』の元から、怪物に襲われようとしている父子を助けようと駆けだすシーン」です。

――――――――――――――――――

 咲羅は掴んでいた実幸のコートを一度強く握りなおしてから離した。そして、親子がいる方へ駆け出す。


「咲羅!」


 実幸の右手が空を切った。


 咲羅が近づくと、男の子の父親が再び助けを求めてきた。どうしようもないのに。咲羅の眉間に深いしわが刻まれる。咲羅は自分が無力であることを誰よりも知っていた。しかし――。


 咲羅は母の方を一瞥した。その目には、母を守ろうという強い決意が宿っていた。

――――――――――――――――――

 途中までは問題ないと思います。「どうしようもないのに」も理解が難しく思いましたが、問題は「最後の一行」です。

 なぜ主人公は「このタイミングで振り返ったのか?」分かる方はいらっしゃるでしょうか? 私には分かりませんでした。

 その後に義母が怪物に襲われますが、この時点では父子が狙われていたという描写の筈です。


 ここが特に意味不明でしたが、全体的に「内容や状況を理解するのが困難な文章」だと感じました。



 続いて構成に移りますが、序盤から物語が動いているのは良いのですが「説明が多すぎる」と感じてしまいました。


 どんな作品でもそうですが、物語の最序盤はキャラ・世界観・状況などを説明する必要があり、それに加えてストーリーも進めなければいけません。

 ですが「読者はまだ物語に入っていません」ので、多くの説明をされても理解できませんし覚えていられません。

 また説明するべき設定が多すぎる為か、説明の順序も理解がしにくいと感じました。

 序盤の説明は必要最小限の方が良いと思いますね。


 それと第4話のお話は伏線だという事は分かるのですが、この時点で「露骨な伏線の為に1話を使うのは良くない」と思います。

 第4話は、まだ「読者に見切られる危険域」だと思います。ここで「知らないキャラの話」を出されても興味が湧く人は少数だと思いますね。



【ストーリー・設定の批評】

 本作はストーリーと設定を纏めて批評させて頂きます。


 まず、本作の時代設定はどうなっているのでしょう?

 「高校」がある、ジャンルが「現代ファンタジー」という事などから「現代日本」だとは思うのですが、村の中の描写が非常に時代がかっており、村と学園しか描かれていない為、時代や文明水準がハッキリとしません。

 学園内で「筋斗雲」みたいな乗り物が出てきたのもハッキリしない理由です。


 そして、時代以外の設定ですが……「盛り過ぎ」だと感じました。

 主人公回りの設定、特殊能力や学園の設定、怪物の設定、今後の伏線など、あまりにも多すぎるように感じます。

 それらを読者に分かるように説明しきれておらず、作者自身も持て余しているように感じてしまいました。



【総評まとめ】

 作者である駿河 晴星さまには申し訳の無い総評となってしまいますが「圧倒的に説明をする能力が足りない。なのに設定まみれの作品」と感じました。


 【文章】で指摘させて頂いたように、状況描写でも「読者に分かりやすい説明」が出来ておりません。

 その状態で大量の設定を説明しようとした結果、「キャラクターや構成にも弊害が起きている」ように感じてしまいました。



【追記】

 本作は、作者さまのご要望により第5章終了まで追記いたします。


 追記は9/29日までに行う予定です。

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