~プリズン・カースト~ お題「はなさないで」KAC20243

白銀比(シルヴァ・レイシオン)

帝王

 「繁華街の帝王」とアングラ世界で名を馳せた若者が、児童売春防止法違反の罪により逮捕された。

 前科がいくつもあり今回は酌量の余地なしの実刑が判決され、五年以下の懲役である。

 不規則な生活や自由気ままに暮らし生きてきた者にとって獄中は、規則正しい生活リズムと単調な仕事、簡素な食事に娯楽がほぼ無い世界は正に拷問に近い。

 慣れてしまえば天国だという者もいる。しかし克服できない事は「退屈」であり、様々な「暇つぶし」を考え仲間同士で実行するのが日課である。その中にとして参加できるかどうかがの一つでもあり、何も知らない新参者や獄中内でのが無い者は洗礼を受ける傾向にある。


 シャバの帝王は当初、「差し入れ」が盛んでその間は物品提供による自衛が可能だが、日が経つにつれ差し入れは少なくなりついには途絶えてしまった。

 差し出す物が無くなると、ついに帝王は暇つぶしのとして自らを差し出すことになり、帝王としてのプライドがこの世界では無意味と言わんばかりに毎晩毎夜、人が入れ替わり立ち代わり帝王を物のように弄び休まることは無くなっていく。誰かに従い準ずることをしなかった帝王のプライドが、助け舟をも遠ざける結果となった。


「繁華街の帝王」がここでは「夜の女王」として返り咲く。


 当初は抵抗しそれを楽しんでいる人々が集まるが、そんな気力も体力も無くなると飽きられ、粗悪なを投与され無理やり反応を駆り出される。

 それすらも退となるとアイスの量が増え、粗悪だった物が更にどんどんと混ぜられだす。


 アンパン、殺鼠剤、ガソリン、オピオイドetc…


 なぜこうなったか。なぜこうなるのか。

 たった一人に言っただけ。ここに来た理由を聞かれたから言っただけ。『話すな』と言ったのに。



「こいつ、どうしたんだ?」


「ああ、ずっとだったからなぁ。ついにしたんじゃね?」


「・・・そうか」


 もう帝王は、話すことすらも出来ない。

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