日常の片隅にひっそり潜む“異界”や“人の温もり”を、軽妙な語り口でそっと掬い上げて見せる――それが『六散人黙示録』の魅力です。どのエピソードも大げさな脚色はなく、まるで目の前で語られているような素朴さと臨場感。けれどその中に、人生の機微や、時代の匂い、そして人間らしい弱さと可笑しみが絶妙に溶け合っています。
酒場のお姉ちゃんや新世界の昭和劇場、方向音痴の不思議な体験、犬の散歩中に出会う個性的な人々、そしてタクシーや訪問者まで、全てが「よくある話」なのに、六散人さんの手にかかると人生の愛おしさや人間の奥深さがにじみ出てくる。ちょっと怖いような、だけど温かい。そんな読後感がクセになります。
気負わず読めるのに、読み終えた後には不思議な余韻が残る、どこか懐かしく、けれど一筋縄ではいかない感性に満ちていて、「暇つぶし」なんてとんでもない、読者をぐいっと引き込む不思議な吸引力があります。忙しい日々の合間にぜひこの味わい深いエッセイ集を手に取ってみてください。きっと、あなたの日常も少し違って見えてくるはず。
SF、ミステリー、ホラー、現代ドラマに
コメディ…と様々な分野で活躍されているオールラウンダーな作者の
満を辞した エッセイ。
これが面白くない筈もなく。ディープな
地元の溢れ話や、あまり馴染みのない
理科系薬大生の生活や、ビジネスマンと
しての製薬会社での苦労話。そして映画やドラマ、生活の中のふとした出来事など。
まさに愉快あり不愉快ありの
様々な体験を端的に綴る、
徒然草子。
温かなユーモアとウイット、そこに
幾許かの毒と真摯と。誠実な為人が具に
見え隠れする。
読んでいてとても心地よい。
そして、めっちゃ面白い!
小説を書くというのは、ある意味で人生を
切り売りするものであると誰かが言った。
ならば、矢張り書き手の為人は絶対に
チェックしたいもの。
奇跡のオールラウンダー作家にして粋人の
善良にして温かみのある冷徹さ。
ここに、隠れた眞理が示されている(?
タイトルと作品が見事に連携して、絶妙な余韻を残してくれる六散人さんのエッセイ、その名も『六散人黙示録』。
ご本人いわく「暇つぶしにお読みください」と紹介されていますが、中身はカラリとした回もあれば、ジットリした時もあり、まさに黙示録を冠するに相応しい読み応えある内容となっております。
薬学系職種と思しきお仕事と、それにまつわる「それはなかなか無いだろう?」という人生経験に踏まえ、途中から発覚するご本人の相貌から来る話の数々に、ちょこっと度肝抜かれて大変愉しませて貰えます。
人の数だけ人生あり。
その人生の一つに、是非あなたも触れてみてください。