雲との遊び
彼は寝転んで空を見ていた。空には雲が散らばっていた。
彼はその雲のひとつが気に入った。
雲に意識を集中させると、雲は大きく広がっていき
まるで白い部屋にいるような気分になった。
彼はそのようにして、雲との遊びを楽しんだ。
彼が雲の右側に注目すると、雲は右側に伸びていき
彼が心を弾けさせると、雲はバラバラに割れた。
いつしかそれは彼の仕事になった。
そういう遊びを繰り返して、彼は意識を強くしなやかにする。
時々、足元を流れる小川の水をすくい、喉の渇きを潤した。
ある日、彼がいつものように遊んでいると
見たことのない雲が彼方から流れてきた。
ほとんどの雲は空気のように軽いのに
その雲だけは硬くて重い。
彼は興味をひかれて、その雲を見つめ続けた。
あまりに長く見ていたので、冷や汗が出た。
全身、縄で縛られたようにしびれている。
それでも彼はやめなかった。
すると突然、その雲の中から一人の女性が現れた。
白髪で痩せていたが、瞳は生まれたての子のように輝いている。
彼は言葉を話すことができなかったので、彼女の目をじっと見た。
彼女は朝焼けのような穏やかな笑みを浮かべながら、静かに目を閉じ
空の中へと消えていった。
死の周りを飛び回る歌たち @tsukigasemeguru
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