死の周りを飛び回る歌たち

@tsukigasemeguru

青い天井

ある朝、目が覚めると天井に青いしみができていた。目を細めてじっと見ているうちに、そのしみはインクを落としたようにじわじわと広がっていった。一週間経つと、しみは天井いっぱいに広がった。まるで空のようだった。

長い間部屋で過ごしてきたので、久しぶりに外に出たような気持ちになった。

部屋を訪れた友人にこのことを話そうと天井を指さしたが、なぜか私以外の人にはそのしみは見えていないようだった。


雨が降った日、天井から青い水滴がぽろんと私のおでこに落ちてきた。驚いてまばたきすると、ぱららとまた落ちてきた。私は愉快な気持ちになって、ゆっくりと体を起こし、その日初めて窓を開けた。春の雨は暖かく、地上の草を薫らせる。私は、足を引きずりながらリビングルームへ行き、白く塗装し使いこんだ棚の引き出しを開けて、道具箱を取り出した。中には絵筆と絵の具のチューブが入っている。画用紙も別の棚から取り出した。


画用紙をベッドの上に広げてじっと待つ。なにも起こらない。そうだ、と思いつきまばたきをする。天井から、ぽろろんと白い紙の上に青い水玉がこぼれる。嬉しくなって、絵の具をパレットに出し、水玉のそばに色を加えてみる。青と私の色が混ざり、思いもかけない彩りが生まれる。私は時間を忘れて夢中になった。



次に目が覚めた時、私はあの部屋にはいなかった。全てが光り輝いている。

目覚まし時計も、枕も、靴下も、ひび割れたロウソクもなにもない。


しかし私は、私を手に入れたような気がしていた。

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