第4話 土の季節。

 誰もいなくなったベンチに、土と草の匂いが吹き過ぎる。

 短髪の男がヨイセっとベンチに腰を下ろす。

 と、腰を下ろしたついでに何か見つける。


「ん?原稿用紙……?」


 男は軽く流し読んでみる。

 前のページと後ろのページが手元にないので、読んだところでなんとも腑に落ちない感じだが、どうやら登場人物たちはこれから宝玉?を探して旅に出るようだ。


 「おもしろいな。小説家と呼ぶにはあまりにも拙い文章だが、引き込まれる。きっと書くのが楽しくて楽しくてしょうがないんだろう」


 太陽が、存在感のない風と競り合うように照らし、吹かせ。今ここはじゃんけん大会の会場のようなどうでもいい熱さで溢れていた。


「夢か。いいな。青春だな」


 男はそのまま風と一緒に原稿用紙を手放した。


 飛んでく物語のかけらを眺め、アツいな。と溢した。


「これからもっと、アツい季節が来るぞ」

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四季。 佐敷てな @sasiki_tena

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