書き散らし日記

運転手

公園歩いて、ちょっと酔った

 最近、公園を歩いていないな。


 私のいつも使っている駅の近くには、大きな公園がある。真ん中に大きな池があって、春になったらボートをこぐことだってできる。都会のコンクリートの横にある、ぽっとわいたような緑豊かな空間だった。

 私は、公園を横目にいつも自転車でびゅんと横切るだけだった。いつも目にはしているけれど歩いていなくて、公園があるなぁぐらいのもの。

 久しぶりに歩いてみてもいいかもしれないと思って、自転車を押してちょっと公園を歩いてみた。


 風が少し強くて冷たかったけれど、明るい光が差し込むいい天気だった。最近は日が沈むのも遅くなってきて、帰り道にも太陽を見ることができる。池の水が波打ってきらきらと光り、小太りの鳩が私の目の前を横切った。鳩が短い足で落ち葉を蹴り蹴りしながら歩いている姿は堂々としている。

 ちょっと歩いて、私は鳩との年期の違いというか、不慣れさを思い知った。とっても歩きにくい。やわらかな土の上を歩いていると、なんだか足元がふわふわしてくる。いつもコンクリートで固められた地面ばかり歩いているからか、なんだか落ち着かない。じゃあ、石畳の上と思ってみたけれど、まっすぐに均された石ではなくちょっと表面がでこぼこした石で、これまた歩きづらい。池の近くの砂利の道には、たまにちょっと大きな石があって、踏んづけて危うく足を捻りそうになってしまった。

 たぶん、私は足を擦って歩いてしまっているのだと思う。たまに靴を磨いていると、靴底が親指側ばかりすり減ってしまっているの気づく。内股気味に擦りながら歩いてしまっているのだろうな。

 公園を歩くことすらままならない自分にちょっとがっくりした。固い道ばかり歩いていないで、やわらかな道もでこぼこな道も歩きなさいということなのだろう。


 公園の中の風景というのは、いつも通りすがりに見ているはずなのに、いつもと違う表情を見せるような気がする。いつも見ている桃色の花を咲かせた木。看板に「コブシ」とかけられていた。濃い桃色の花びらが、くるんと小さく丸まったような形なのだと初めて知った。

 足元に咲く青い小さな小花が集まって咲いているのも、歩かなければわからなかったと思う。あれは、何ていう名前の花だったんだろう。調べてみたら、オオイヌノフグリという花がちょっぴり似ている。大きな花ももちろん綺麗で、でもつめの先より小さな花はいじらしいなぁと眺めていた。

 歩く私に陰をつくる木々たちも、立ち方からしてみんな違う。当然だけど、みんながまっすぐに空に向かっているというわけじゃなかった。ちょっと斜めに立っている木を眺めていると、世界がちょっぴり傾いているような気がして変な気分になってしまった。池に向かって腰をかがめているような木もいて、自分の姿を水に映して眺めているようにも見えた。ちょっとかわいい。


 公園にはたくさんの人がいる。ベンチで休憩したり、ジョギングしたり、友達とおしゃべりしたり、ペットを連れていたり。

 すれ違う人に道を譲ろうとして、あれっと気づいた。

 私、人と目が合わないように、斜め下とか斜め上ばっかり見てるな。もちろんじっと見つめていたら失礼だけど、それにしたって視線が横にそれすぎている。

 それって、一応文を書く人間としてあまり良くないかも。人間観察というか、人のことをよく見たほうがいいんじゃないなんていう考えが浮かんだ。だからといってすぐに人を見つめられる人間になるわけでもなく、遠目に公園の中で思い思いに過ごす人をそろりと見るぐらいに終わってしまった。

 そういえば友人に、今の注文に来てくれた店員さん素敵だったねと言われても、顔を全然見てないからわからなかったなぁ。失礼にならない程度に人を見たほうがいいのかもしれない。反らしすぎるのも、それはそれで良くないような。


 そんなことを考えながら、公園を歩いていると、何だかちょっと頭がくらくらしてきた。これは、あれだ、乗り物酔いした感じに似ている。え、公園を歩いていただけなのに。

 そんなまさかと思いつつも、自転車を押して公園を抜けて、コンクリートの道へと出た。いつもの固くて均された道。慣れているだけあってほっとして、ちょっと気分も落ち着いてきたように思う。

 でも、まさか公園を歩くだけで酔うなんて。いやいや、ちょっとお腹が空いていたからだよ。空腹感でちょっと気分が悪くなってしまっただけさ。そんなことを考えつつも自転車に乗って家に帰ることにした。


 週一ぐらいは公園を散歩したほうがいいのかな。







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