どっとはらい
ということは、彼は右手人差し指が無いのか。
話を聞いていたみんなが痛みを想像して押し黙る中、一人が彼に思い切って聞くと、彼は淡々と答えた。
「いや? メスで切ったのは、右手の人差し指の爪の一部。指は健在」
なんだなんだ、と皆笑いながら「てっきり指を切り落とした話なのか」と「つい想像して怖くなってしまった」と、雑談に花を咲かせていた。
とはいえ、当時の跡は未だに残っているとか。一部だけ皮膚と爪の色が違うのだそうだ。
彼は今となっては、ささくれは根元から爪切りで切るし、ハンドクリームはよく塗るようになったし、お手洗いから出れば石鹸を使うし、ポテチは箸で摘まむ、とのこと。ささくれの処理をしたら消毒も欠かさないとのこと。
「でも、あそこで親が気付かなかったら、膿が溜まってるのを通り越して壊死とかになってたら……本当に切ることになってたんじゃないかな」
そう笑いながら、そうならずに良かったと、雑談は締めくくられた。
……そんな話をなぜ今になって思い出したのかというと、筆者は最近爪の脇にささくれができることが増えてきた。おそらく、爪の水分量の不足なのだろうが……
根元から切るよりも引っこ抜いた方が、ささくれの跡がチクチクしないのもあって、ついつい引っ張って抜いてしまったのだ。カクヨムコンの今回の「ささくれ」のお題が来る前日のこと。「箱」のお題に追われて……右人差し指の爪の脇のささくれを。
今、こうして書いている最中、気のせいでなければなんとなく……
ささくれを引っ張った結果指を切ることになった話 九十九 千尋 @tsukuhi
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