うしろでずっと水の音がしている気がする。

個人的に大好きなシリーズ企画があります。
『共通する文末で〆る』というものです。ちなみに主催されているのは、まさにこの作品の作者様でもあります。

文末が決まっているという形式上、どうしても読む前からオチがわかってしまうのが唯一のネック。
……と、いち参加者として、ずっと思っていました。

懺悔します。とんだ思い違いでした。


この作品に関しては、オチがわかっているからこそ。最後の絶望を察してしまいながら読むことで、より文章の、語り手の哀しさに浸ることになる。
排水溝のうえに描かれた冷たい渦に、こちらも一緒に呑まれるような。
あるいは一時のささやかな至福が、泡沫のごとく消えていくのを、ただ茫然と見守るような。

水が逆に流れることはないように。触れ合った事実も、抱いた想いも、なかったことにはできない。
ささくれはまるで、初めからそのために負わされた烙印だったかのように、指先でパックリ開いて嘲笑っている。
ああ、水の音が止まない。涙の代わりに流れ続けている。



……などというポエミーでメランコリックな気分に浸れる名作です。
ポッキリ800字でお読み得!サンキュー文末企画、ありがとうKACのお題決める人、そして何より作者様こと雨蕗空何氏。おかげで素敵な文学に出逢えました。
今夜は枕を濡らして寝ます。水が止まらないんだから。