見つかったのは女神――いや、「帰るべき場所」

この作品を見つけたとき、唖然としました。

洗練された美麗な文章。一文字めから世界に読者を引きずり込む、巧みな描写。
目の前にすべてが色づいて広がって見える。
手を伸ばせば触れそうな存在感。登場人物の息遣いさえ聞こえる。大地から土の匂いがする。

圧倒的文章力。緻密に練り上げられた上質な物語。
しかも手に取りやすい約80000文字のコンパクト設計。



なぜ……

どうしてこれが……埋まっている……?



おっかしいだろ☆一桁で許される作品じゃねえぞ!!!!
と私の中のスコッパーが叫んだので僭越ながら☆を添えつつレビューをしたためさせていただきます。
また興奮のために一部言葉遣いに乱れが生じましたことをお詫びいたします。


あらすじは作品紹介欄に過不足なく記載されているので省きますが、本作の特徴は何といっても精緻な文章でしょう。
とにかくどこを切り取っても美しい。丹念に織り上げられた絹のごとき滑らかさ。
文末がですます調のため、まるで大人の絵本といった風情があります。

その美麗極まりない文面で綴られる壮大でファンタジックな描写の数々には何度となく唸らせられます。
女神の美貌から神の箱庭の絢爛さ、はたまた神の神たる暴力的なまでの存在感の威圧。
私が思うに、本作は映像化不可能だと思います。誰がどんなに完璧なCGやアニメーションを作っても、この文字の羅列が生み出すイマジネーションには遠く及ばない、という確信を持っています。

一方でお話そのものは派手な部類ではありません。
若くして重責を負った少年王と、天上を追われた美貌の女神が、ゆっくりと交流を重ねていく。王は女神を通じて世界の理に触れ、女神もまた、長い旅の終わりを見つける……。

静かで重々しく、確かに昨今の流行りものにみられる爽快感とかワクワク感といったものとは真逆と言えます。
しかしその静謐あればこそ、物語世界に果てしない深みと奥行きを感じられるというもの。本作に関してはとくにそう思います。
何しろ女神の物語ですからね。
その威厳たるや、メインヒロインなどという横文字を使うのも憚られるほどの存在感です。もはや不敬の領域。

その彼女が最後に発した言葉に、読者一同を代表して言わせていただきましょう。涙を禁じえなかったと。

ゆえにこのレビュータイトルです。

これは「失われた女神を捜した<星の民>の物語」である。
けれど私はこうも思う。

これは、女神が帰るべき場所を見つける物語なのだ。


最後に作者様へ。
とても素敵なお話でした。素晴らしい作品をありがとうございます。
この作品が今後もっと多くの人の眼に触れ、本来あるべき評価を得られますことを、微力ながら心より応援申し上げます。