彼女と、カフェに行きたかった。
うびぞお
怖い映画を観たら一緒に夜を過ごそう 番外編
四限が休講になって彼女は早く帰って来た。学部が違うわたしは元から四限は空きで、つまり、二人揃って暇ができたということだ。なのに、ホラー映画馬鹿の彼女は、飽きもせず怖い映画を観ようとして、同じ部屋にいる
何を観ようかと、録画データを見詰める横顔はひどく真剣で、長い睫毛が揺れて、その瞳がキラキラしている。
ホラー映画を見てる時の彼女が一番可愛いのが癪に障る。
できることなら、彼女を頑丈な箱に閉じ込めて、他の誰にも絶対に渡さない。箱にいる彼女には映画なんて見せないで、日がな一日四六時中ベッタリ一緒にいたい。
…なんて、わたしの恋は狂気を孕んでる。
「どうしたんですか?」
ようやく彼女はわたしに気付いてくれた。
「せっかく時間が空いたんだからカフェとか行かない?」
「あ、そうか。支度しますから待って下さい」
わたしの誘いに応じて、すぐに映画を諦めてくれた。なんだかちょっと罪悪感。
はーっとため息をつく。
「わたし、あなたを箱にしまっておきたいわ」
「ははは、映画が観れるなら箱の中でもいいですよ」
彼女は出掛ける準備を始める。
「ちなみに、あなたはわたしを箱にしまっておきたいと思わない?」
「箱ですか?」
彼女はわたしの顔を見て、小首を傾げた。
「『箱』の絡むホラー映画って、それこそ閉じ込められるだけじゃなくて、箱の中に潜む恐ろしいナニカに襲われるとか、色々。
でも、私があなたに入ってもらうなら、箱より『
「
結局、私たちはカフェに行かず、無数の立方体の中に閉じ込められ、立方体を次々移動しながら罠を解除したり謎解きをしたりして命懸けで脱出を目指す映画を観た。
怖いっていうか、不条理!
「こんな立方体にわたしを入れたいの?」
恐る恐る尋ねると、彼女は微笑む。
「だって、ただ閉じ込めても面白くないでしょ?」
彼女はわたしよりヤバいと悟り、箱の中に隠れたくなった。
★☆
ネタにした映画「キューブ」
彼女と、カフェに行きたかった。 うびぞお @ubiubiubi
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