第5話 ディンケンスの供述
“箱”についてあなたはどう思いますか?
角があり美しいと思いませんか?
人の身体は角が無く、曲線ばかりで気持ちが悪い…
その点、箱は面と角がある。角が美しい…。そして何より、箱を閉じて、また開ける瞬間っ。この瞬間がたまらなく心躍るんだ。
僕は物心つく頃から蔑まされて生きてきたんです。
「お前はキモチワルイ」たしか…そういわれた。ずっとそう言われていたから疑問も湧かず受け入れていたんです。
だから、彼らは僕なんかよりずっと美しいはず。
でも、手も足も、目も鼻も、耳も口もある。なにが違うのか分からなかった。
そこで気づいたんだよっ
“中身”なんだって。そうだ、“中身”だよっ“中身”なんだ、分かるだろう?
だからさ、僕なんかよりずっと美しいはずの彼らの中身が、どうしても見たかったんだ。そうしたら、湧き出てくるんだ紅い紅い血が…
人間の体の中にどうやったらあれほどの血と臓器が溢れる事無く収まっていられるのか不思議でならないよ。
はぁ〜、あの時の驚きと感動といったら…。
それで、切断した身体と血液は複数の箱に詰め冷凍庫に入れて閉まったんですよ。
そして、1~2週間たってからどうしてもアレが気になって、冷凍庫の中に閉まった箱を開けたんだ。凍った血の海の中に沈む腕や足。引き寄せられるように手でなでた。硬い、だが滑らかで、手が血で汚れるのも忘れて撫で続けた。
これだけでも美しいなら、箱から出して光に透かせば、もっと美しいだろう。と、私は思った。そして、箱を壊して中のものを出した。一抱え程の赤黒い四角い物体は所々浮き出るような白い影がみえている。それを机の上に置き、ライトで照らす。
すると、紅が反射して美しくかがやいたんです!!ああ、なんと美しいことか!やはり彼らは美しかったっ、美しかった…。
それからは箱に詰めたあれを時折だして、ライトに照らしながら眺める様になった。すると、血が少しづつとけてあの四角い形ではなくなっていった。
僕は堪らなくなって、新しい美しい物をつくり始めた。溶ける事を考えて、幾つも、幾つも作った。
ああ、そういえば、いつだったか、睡眠薬が切れて切断中に目を覚まされた時があったんだ。あれはいけない、うるさくてかなわない。突然目が開いたと思ったら痛みで絶叫、錯乱して無いはずの腕や足を振り回して手が付けられない。そして、痙攣をおこして死に絶える。
あれをやられると、大事な血液が飛び散ってしまってもったいないんだ。僕は血液も肉体も臓器も1つの箱にピッタリとハマり切る様に作りたいのに、あんな事をされるとピッタリに収まらなくなるんだ。せっかくピッタリの箱を作ったのにだよ?それじゃあ、美しくないじゃないか、美しい正方形である事が重要なのに…美しくなくなってしまう。
まあ、そうやって作りなれてきたら、今度は1人だけで楽しんでいるのが申し訳なくなってしまったんだ。
だってそうだろ?綺麗なもの美しいものは誰かと共有しなくちゃ。
だからさ、考えたんだ。何処が綺麗に美しく見えるだろう?って、公園のライトアップされる場所は?あそこの広場はどうだろう?いや、あそこは?と、そんな事ばかり考えていた。
そして、とある記念日の時にあれをプレゼントしたんだ。
そしたら、多くの人が歓声をあげてくれた。嬉しかった。こんなに喜んで貰えるならまた贈ろうと思った。
あなたも見てくれたかい?美しかっただろ?真っ赤な琥珀みたいで神秘的で感情の全てが高鳴るような美しさ。
...あれ?あなたは美しいとは感じなかったのか、残念だな。
ハボック刑事 フジノハラ @sakutarou46
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ハボック刑事の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます