最終話
「――というわけで、しばらく活動は休止だな」
退院翌日。
早速、俺は〈占い喫茶・
「なんでなんで! 納得いかない!」
「納得いかなくてもだ。関係各所との何の調整もなしに、宇宙ホテルを墓場まで持って行ってしまったことに、もう非難ごうごうの嵐さ。社会的な信用も落ちたし、株価も終わってるし……店じまいも考え始めてるのが正直なところだ」
「世界救ってコレかぁ……釣り合ってないよ……」
「釣り合いもなにも、そもそも市場創出できてない分野だったんだ。――やっぱ、
ニヤリと、
すっぽりと記憶がなくなってしまっているが、俺はどうやらその
でも同時に、過去の俺には、そうまでしても譲れないものがあったんだろう。そして、俺は見つけたんだろう。大切なものが、大切な場所が、大切な時間が、いま目の前にある気がした。
俺を救ってくれた人たち。
そして、俺が守るべき人たちだ。
「俺に言うな。てか、お前だって、やろうと思えばできたんだろ。そこまで言うんだったら、やればいいだろ」
「おいおい、それを
「いやいや、だから実行しかけたんだろ? 止めたのはお前の方だろ」
「いいや、君が先だね」
「はぁ? お前が止めなきゃできたんだ」
「君が止めたんだ」
「お前が止めたんだ」
醜い水掛け論。
君がいたから、救われたんだと。
欠けちゃいけない最後の一人だったんだと。
「……ありがとう」
ぼそりと。
そうして逸らした先には、ニュースの画面があった。連日報道されているのは、
続いて報じられる
そして、置き土産だと言わんばかりに
一枚目は、正面から撮られた脳と脊椎の写真。
二枚目は、写真というよりかはイラスト。天の川を見つめる人の絵。人体を模した簡易的なシルエットのなかに、二匹の蛇が螺旋を描きながら絡み合う姿が描かれている。ちょうど人間の頭部で、蛇が見つめ合う構図だが――
「……まだ終わりじゃない、ってことか?」
「いいや、終わりさ」
「?」
「思わせぶりな行動をして、混乱を誘いたいだけだろうな」
世界の混乱。
それが、
事実、〈
そうやって、
*****
「そんなことよりも、せっかくの長期休暇ができたんだ。今年の夏は海に行こうと思っていてね」
「……へぇ」
「おや? 興味なかったかな?」
興味がないわけではない。むしろ、ちょうど海のことについて考えていたところ。
というのも、日記の相手から「海に行きたい」と言われていたのだ。それだけに、タイムリーすぎて呆気にとられていた。交換相手は、ついに「
……なんてことを、
と。
悪寒が走った。俺の考えを読み取ったのか、
「そういえば、日記の相手も言っていたな。長い間、返事がなくて寂しい思いをしたと」
「なッ……。おま……どこで? なんで知ってる!」
「逆にどうしてバレてないとでも? そうだ。返信が遅れた穴埋めに、水着選びに付き合ってもらうとしよう」
「……。いや、ちょっと待て。穴埋めするのは分かるが、なんでお前に付き合わないといけないんだ? お前は関係ないだろ」
あっ……やべ、とよく分からない反応をする
「ほら。
「なる……ほど……?」
「人生は経験値集め。関係ないと思える経験も、意外なところで役に立つものさ」
「それは、そう……って、るせぇよ!」
反抗するが、
そして駄目押しついでに、
「……分かったよ」
「助かるよ。こういうのの流行にはめっきり疎くてね」
「嘘つけ。……てか、俺も分かんねぇし」
「特に僕も成長期らしい。合うものがあればいいんだけど」
知らねぇよ、と流すつもり。
だが、
目に飛び込んできたのは、豊かな曲線によって描かれる双丘。ドキリとした。少し前までは何とも思わなかったはず。春よりも身体のシルエットが分かりやすい服装になったせいもあるのだろうか。心なしか透ける肌に、妖艶ささえ感じ始める。
「おや? いまどこを見ている?」
「あ……いや……。別に?」
「隠すなよ。僕と先輩の仲じゃないか。世間的には気にする時期らしいが……、なぁに、安心してよ。僕は君のような変態には寛容なんだ」
「おま……ッ、何言って……」
くつくつと笑う
「ざーこ」
捻くれ少女の皮肉は、宇宙を掃く げこげこ天秤 @libra496
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