問6 解答

・解答例(僕)


 このロボットは「命令されたことしかできないロボットである」。


 それを僕の立場とする。


 作者が意図的にこのロボットの内面描写を書いていないことは明らかである。僕たち読者は、あくまでも「神の視点」によって、このロボットを外側から見ることしかできない。だから、このロボットの内部でどのような演算が行われているかを伺い知ることは僕たちにはできない。

 よって、最後のロボットの行動も、深刻なエラーを起こしたロボットが主の新たな命令を受けるために主の埋まっている墓へと戻ったが、命令を受けることは当然できず、エラーを解決できなかったために機能停止した、と僕の立場では考えることができる。理性では。

 ただし、このロボットの主がそうであったように、僕たち読者は、主のお墓に寄り添うようにして機能停止したロボットの描写を読んで、それがロボットが選んだ「自分が行きたい場所」であり「自分がしたいこと」であると思わずにはいられない。そこに主が言ったように「心」や「魂」や「それっぽく思えるだけの何か」があると感じずにはいられない。


 僕の立場では、それはただの錯覚である――だが、錯覚で何が悪いのか?


 自分が行きたい場所へ行けと。

 自分がしたいことをしろと。


 そう命じられたロボットが、死んだ主の墓に寄り添うことを選んだように見えるその錯覚は、例えそれが事実と異なっていて、実際には何らかの偶然の産物だとしても――僕たち読者の心に、最も美しい瞬間を切り取った写真のように焼き付けられる。


 それは、命令されたことしかできないはずのロボットが「心」や「魂」や「それっぽく思えるだけの何か」を手に入れて、「命令されたことしかできないロボットでない」ロボットとなることよりも遥かに奇跡的なことであるように僕には思える。


 故に。


 僕はこのロボットを「命令されたことしかできないロボットである」と考える。


 だが。


 例えそれが錯覚であり間違いであり偽物だとしても、その描写を読んで僕が思い描いた主の墓に寄り添って眠るロボットの光景は――そして、その光景に対して僕の心の中に湧き上がってきた感情は本物であると。


 そう思いたい。


・判定(※先輩による個人的な判定です)


 〇(合格)


・解説(※先輩による個人的な解説です)


 お、おう……。

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