箱 【KAC20243】

KKモントレイユ

第1話 箱 【KAC20243】

 X大学に通う私は友人Aから「引っ越しを手伝ってほしい」と頼まれた。春休みで用事もなかった私は友人Bと一緒に手伝うことにした。


 Aは駅に近いアパートに引っ越すということで、今まで住んでいたアパートから荷物を運ぶ。荷物は知り合いのトラックを借りて運ぶことにした。転居先のアパートは新しく通学にも便利な場所だった。

 部屋に入る前、Bが少し嫌な顔をしてAに聞いた。

「他にも誰か手伝いに来てるの?」

「いや」

 不思議そうな顔をするA。


 部屋に荷物を入れて片付ける。気が利くBはドライバーやペンチなど工具類を持って来ていた。時計が好きな彼はキズがついたら嫌だと言って、時計をテーブルに置いて作業をする。

 Bが「おい、A。押入れにある『箱』お前が持って来たの?」と聞く。

 Aが怪訝な顔をしてやってくる。

「ここに入るのは今日が初めてだよ。なんだこれ? 前の住人のものかな」


 押入れの奥に『箱』がある。

「箱の中、何が入ってるの?」

「開けてみようか」


『箱』を開けると、中に前の住人のものらしいものが入っている。

 錆びたドライバーやペンチ。ほこりにまみれた古い時計。

 何か気になる様子のBにAが聞く。

「どうしたの?」

「この時計。おれのだ」

「ええ。何言ってんの。お前のは今テーブルの上に置いたじゃん」

 しかし、そう言われてみると時計やドライバー、ペンチも、Bが持って来たものに見えて気味が悪い。


『箱』の下の方に古い新聞が入っている。

「なんだこれ。1974年(昭和49年)3月10日……50年前の新聞だ」

 なんでこんな古い新聞があるのだろう。前に住んでいた人は古いものを捨てられない性格だったのだろうか。


「おい、ここ」

『3月8日深夜。都内のアパートの浴室でX大学に通う学生三人が自殺』とある。

 記事を読んで言葉を失った。

 そこにはA、B、私の写真と名前が書かれている。


「な、なんだよこれ。オレたち、ここで50年前に死んだのか」


 その時、浴室の方で何かの音がした。

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箱 【KAC20243】 KKモントレイユ @kkworld1983

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