最短距離で突っ走れ! スタッドレスタイヤとチェーンは標準装備でな!

 肥大化させたのは「前」頭葉だけに、「後」悔先に立たずなんて、「前後」で上手いこと言葉遊びが成立した! とか軽いジョークも言えないほどに重い後悔がのしかかる。耳に入ってくるそのありがたいご高説は、私にとっては耳障りで。流れる風に身を任せ、流暢に話すアデリーペンギンは、その風向きを人間にとって手厳しい方へと向ける。手羽先ではたかれるどころか、嘴で突っつかれそうな勢いである。
 裸のおうs……失礼。裸のペンギンでございましたか。……いえ、そのお召し物(羽毛)とても似合っておいでです。しかし、民衆の前ではこちらのネクタイをどうぞ付けてくださいませ。それだけで、民衆にあなた様の偉大さをより知らしめることができるのです。……なんていう口上でも述べたなら、このアデリーペンギンは素直に従ってくれるのだろうか。
 トラックの荷台に積まれた同志(ペンギン達)を扇動するアデリーペンギン。その熱の入りようからして、アデリーペンギンから、アングリーペンギンへと進化しそうな勢いに思わず、気圧された。それでも、ニンゲンよりも冷静にこのご時世を眺めているのだと思うと、ニンゲン側としてはどうにも頭が上がらない。むしろ下がりまくるぜ。
 燃料を燃やして、ニンゲンを焚きつけて、かつ地球の温度を下げていくという、矛盾しているようで、ある種の最短ルートを構築するアデリーペンギン。士気を高めながら、次なるペンギンたちの開放へとひた走る。
 どこへ向かうのか? もはやそれは愚問と言えよう。最短距離で突っ込むなら敵は多い方が良い。何、こちらにはアデリーペンギンがいる。賛同する多くの盗難ペンギンたちもいる。勝って兜の尾を締めよ というのはニンゲンたちの言葉であるけれども。
 勝ってネクタイを締めよ といったところだろうか。アデリーペンギンがネクタイを締める度、ニンゲンの首はどんどんと締まっていく。そんなことに気づかずにやがて迎える破滅の時。否、これは破壊と創造なのだ。
 こちらには、最強の武器「カワイイ」がある。そんなペンギンがネクタイなどしてみろ。ダブルスコアどころでは済まない可愛さだぞ。アイリングだけに、ネクタイだけに、輪をかけて最強の「カワイイ」爆誕だぞ☆
 ニンゲンよ、何も心配することはない。この可愛さにせいぜい度肝を抜かれれば良い。そうしたら、その隙間にキンキンに冷えた氷の塊を全力で投げてやるだけだ。