敏腕エージェントの日常1

信仙夜祭

今日は、爆弾解除と銃撃戦か~

 敏腕エージェントには三分以内にやらなければならないことがあった。


 目の前にある、都市破壊爆弾のタイマーを止めることだ。


「くっ……。後二分五十秒」


 これを止めなければ、万単位の死者が出てしまう。

 テロリスト共も、面倒な爆弾を作ってくれたものだ。

 どっからTNT火薬換算で、100トンもの爆発物を調達したのか……。


「第三国が、関与しているのは明白だな」


 独り言をつぶやきながら、ネジを全て取り外した。

 そっと、時計のカバーを開ける……。


「こういう時は、赤い線か、青い線があるはず……」


 時計からは、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の七色の線が張り巡らせていた……。

 しかも、カバーの裏には、顔文字を添えて、『頑張ってね、おつ~w ( ^^) _旦~~』と落書きがあるし。


「どんだけ、性格最悪なんだよ! 爆弾魔が!」


 だが、俺は国家お抱えの敏腕エージェントだ。

 ちょこざいな精神攻撃など通用しない。


 心を無にして回路を探って行く。


「エージェント梵奴ボンド! 解除はまだなの!?」


 同僚の女エージェントが、悲鳴を俺の耳の近くで上げる。

 正直、五月蠅い。

 集中させて欲しい。


「……もう少し時間をくれ。外の銃撃戦は任せたぞ」


「こんなハンドガンで応戦できる訳ないじゃない! 弾を寄越しなさいよ!」


 どうやらテロリストは、他国にまで情報を流し、この敏腕エージェントと共に一掃する気みたいだ。

 女エージェントが、俺の懐とお尻から弾丸をひったくって行く。

 その直後、ガトリング砲が火を噴いた。

 俺は、背中に目がある。瞬時に軌道計算をして直撃を避けた。

 だが、女エージェントは被弾してしまったようだ。蹲り、声も出さなくなった。


「残り、一分を切ってる。急がないと……」


 ガトリング砲の弾が、火薬に直撃したが、分厚い擬装用の装甲に阻まれて爆発しなかった。

 まあ俺は、それまで見越していたのだが。


「これだな、緑の配線だ!」


 GNDと見せかけて、火薬にまで配線が伸びている。

 フェイクは見破った。


 ――パチン


 俺は、緑の配線を切断した。





「うん……。エージェント梵奴ボンド?」


 女エージェントの目が覚めたみたいだ。


「気がついたか。爆弾の解除に成功して、他国のエージェントも一掃しておいたよ」


 俺は爆弾を解除して、女エージェントを担いでその場を離れた。

 他国のエージェントは、爆弾を見て固まっていたな。

 その後、車をパクッて移動中だ。


「それと、テロリスト共の個人情報を残して来た。後は、勝手にドンパチを始めると思う。さあ、帰還しよう。それと、数ヵ月は静養が必要だぞ」


「……そう。何時もながら流石ね。敏腕以外の言葉が出ないわ」


 って、ゆ~かさ~。街中に爆弾を仕掛けるの止めようよ。

 市街地で銃撃戦までしてんじゃん。

 何処の世紀末だよ。もしくは80年代の映画かよ。





 こうして、今日もこの国の平和が護られた。

 敏腕エージェントの活躍は、終わらない。

 終わりが見えない戦いは、今後も続いて行く――かもしれない。

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