1・2・3・4狂想曲

新巻へもん

なぜか今でもときどき見るんですよね

 私には三分間にやらなければならないことがあった。

 机上に置いてある時計へちらりと視線を走らせる。

 秒針は容赦なく終末へと向けて時を刻んでいた。

 私は素早く視線を戻して解答用紙に意識を向ける。


 つい先ほど最後の問題の回答として選択肢3をマークしたはずなのに、解答用紙の最後の問いの回答欄はまだ塗りつぶされていない。

 OK。

 ここは落ち着こうじゃないか。

 最終問題の回答は3だ。

 素早く鉛筆で塗りつぶす。

 これは間違いがない。


 問題はここからだ。

 どこでマークミスが発生したか分からない。

 残り時間はもう2分30秒ぐらいだろう。

 全問をチェックしている時間はない。


 問題数の半分にあたる番号の問題用紙の選択肢には3に丸がつけてあった。

 当該番号の解答用紙を確認すると2が塗りつぶされている。

 その前の解答欄は3にマークしてあった。

 おいおい、こんなに前からずれて回答していたのか。

 服の袖で額の汗を拭う。


 慌てて後半の解答に消しゴムをかけてはならない。

 一問ずつ機械的に一つ下の段の同じ番号を塗りつぶしては、消しゴムをかけ、その上の数字と同じものに鉛筆をぐりぐりと押し付けた。

 この作業を繰り返して先ほど確認した問題番号まで到達する。

 

 問題用紙をぱらぱらとめくった。

 最初から4分の1の順番に当たる問題番号の選択肢は1以外に射線が引いてある。

 解答用紙は……1!

 これで75%はマークミスがないことになった。

 解答には自信がある。

 正しくマークできていれば正解のはずだった。


 残りの問題の問題用紙と解答用紙を素早く照らし合わせる。

 2。一致。

 3。一致。

 3。一致。なんか3が多いような気がする。いや、今はそれどころじゃない。

 1。解答用紙は4になっている。

 ここでズレたんだ。


 あとは先ほどのように空欄になったところに上の回答をずらしていくだけでいい。

 最後に先ほど4を選んでいた問題を1にマークしなおすとビービービーと音が聞こえる。

 はっと目覚めると私はベッドの中だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

1・2・3・4狂想曲 新巻へもん @shakesama

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ