モニカ、のこり3分まにあうかな?

姉からの挑戦状

 モニカには三分以内にやらなければならないことがあった。


「書取ノート、終わらせたらご褒美あげる」


 モニカ、5歳。

 とある王国の末の姫君。

 勉強は大嫌い。

 そんな幼女に、今朝、姉姫リジェルはニンジンを吊ったのである。


「ごほうびって、なんでつか!」

「いいものよん」

「いいものってなんでつか!」

「知りたいなら、お昼までに宿題やり切りなさい」

「わかったでち!!」


 朝のお返事は元気よく。

 あっさりクリア、間違いなし!

 そんなの簡単。

 姉はニヤニヤ。

 

 すでにお昼まであと3分、それももう切った。


 モニカはがんばったのである。


 部屋に入る。

 すぐにお友だちのわんこ、ケルスと遊び始める。


「あかんがな。宿題どないしてん?」


 ケルス、人語を解す。

 注意されて、ハッと。


「そうでつた!」


 机に向かう。

 絵本を手に取る。


「って、なんでやねん!」


 監視役も兼ねたケルスにツッコまれて、ハッと。


 ノートを開く。

 魔法文字ルーンが列挙された参考書も開く。


 邪魔してはいけないと、ケルスはそっと部屋を出た。


「って、全然あかんやん」


 お昼前に戻ってみれば、ノートは真っ白。

 文字の代わりに、よだれが盛大に地図を描いていたけれど。


「ケルス、いじわるでち! ねむりの魔法をかけるなんて!」

「お嬢、勝手に自分で自分に、おさぼりの魔法かけたんやがな」


 八つ当たりしていても時間は進む。


 ハッと時計を見れば。


 あと10分。


「にゃあーーーっ!」


 絶望の叫びのち、やっと集中。


 残り3分。


 間に合うか?

 間に合うのか?


「あら、珍し。出来たのね」


 ダイニングに飛び込むと、リジェルはもう待っていた。


「どれどれ……」


 リジェル、ノートを閉じると、ぺしっと音を鳴らしてモニカのかわいい額を。


「なにするでつか!」

「文字になってない」


 給仕のメイドにも見せれば、彼女もくすくす笑って「そうですね」。


「残念。これでご褒美なんて、あげられない」


 リジェル、シェフ特製ケーキをモニカの目の前でペロリ。


「にゃああああぁぁぁぁぁっっっっ!」

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