田舎のおそろしい風習と、神への畏怖

主人公の谷原は農林水産省の官僚として、ある町を訪れる。それは楽な出張のはずだった。

朝比町は自然が豊かで、長閑な町だ。最初は観光気分で視察をしていた谷原だったが、田んぼを見た際に違和感を覚える。そこには御幣(ごへい)が刺さっており案内役は『神様が落ちてくる』と説明した。

御幣に悪寒を感じた谷原は、さらにその夜、稲光の中に何かがいるのを見てしまい恐怖する。

見てはいけないものを見てしまった、と混乱している谷原の前に現れたのは、日置という女性警察官。姪が死んでしまった理由を知りたいという彼女と共に、朝比町の隠された真実を探っていく——。


風習系のホラー小説は、ただ残酷なものも多いのですが、家族を守ろうとする気持ちや、愛情がしっかりと伝わってくる物語でした。

谷原は、物語の序盤で不気味なものを目撃してしまうのですが、町の人たちが、それを当然のこととして受け入れているのが、おそろしいです。

そして、明らかに怪異が起こっているのに、主人公以外の人たちには、それがはっきりとは視えていません。理解してくれる協力者はいますが、自分にしか視えない得体の知れないものが、ずっと追いかけてくるのは、相当な恐怖だと思います。

最後の最後までおそろしい物語でした。

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