第2話 〜人殺し〜

[神]

確かにこの女はそう言った。イメージとはかなり異なった見た目をしていて、本当にこの女は[神]なのか疑いたくなったが、死んだ男には、そんなことはどうでも良かったのか…死んだショックか…この女が[神]ということをすぐに信じた。

神は俺の近くによって話し始めた。


「あなたが想像していた神とはイメージが大きく違いましたか?」


本当にその通りだと思った。


俺に限らず、大抵の人は[ゼウス]だったり[ヴィーナス]だったり…カリスマ性を持ち合わせていると思っているだろうが、今俺の目の前にいる[神]は、可愛らしいという感じがした。

神話について考えていたら、とある言葉が脳裏を通った。


[最後の審判]


生前の行いを審判され、天国…もしくは地獄へ行くことになるのだ。


[地獄]


そんな言葉を思い出したせいか、俺の中のとある記憶を思い出してしまった。

息が荒くなっていく

心拍が早くなっていく

額から汗が止まらない

───────

そのような様子を見せる少年を落ち着かせるようなタイミングで神は話しだした。


「あなたを[異世界行き]とさせていただきます」

「…は?」


神の顔を見て、驚いた顔をしながら少年は言った。

いや、これは言ったというよりも、心の声が漏れたという方が正しいのだろう。

続けて少年は言う。


「おかしいですよ…僕は地獄行きでしょう…」

「地獄行きとはなりませんよ」


少年は正直地獄行きは覚悟していた。それは少年のとある出来事が関係していたからだ。

力強い声で少年は続けて話す。


「なんでですか…僕は人としてしてはならないことをしてしまったんですよ!僕は……僕は…!」


少年は下を向き、途端に情けない声で言った。


「人殺しなんですよ……」


神は言う。


「知っていますよ。いつ、どこで、なぜそのような事になってしまったのか。全て知った上で言いますが、あなたは悪くないです」


少年はほんの少しだけ顔を上げて、苦笑いしながら話す。


「はは…同情ですか…いりませんよ。事実はもう変えられない」


神は少し呆れ気味に言った。


「…だったら地獄に行きますか?」


少年は少し心が揺らぎ、答えた。


「…いいえ…」



地獄に行く覚悟はあったが、行かなくてもいいなら行きなくなんてなかった。


怖いものは怖い。


少年は申し訳なさそうな表情をしたが、神は、地獄に行きたいなどと言われなくて安心したのか、表情は少し笑顔になった気がした。


「ですが…!」

「わかっています。このまま反省をしないでのうのうと生きていくことなんてしたくないのでしょう。言ったではありませんか。[異世界行き]だと」


異世界行き…?


少年はやっとその言葉を受け止めた。

驚きと困惑と不安で、何とも言えない表情をしていた。

そんなアニメみたいなことが起きると思っていなかったのだ。

神は続けて答えた。


「人を殺した…その罪の重さだけ、人を救うことを命じます」


俺の心に希望の光が灯った。そんな気がした。




余談

ハヤトの過去についてはいづれ明らかにさせますね。今ではないということです。

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