第4話 〜そして異世界へ〜

光に包まれた空間から、声がした。

遠くて、今にも消えてしまいそうな声だ。


[こいつには適正があるようだ。]


何を言っているんだ…?適正…?意味が分からない。

そんなことを考えていると、禍々しい[何か]がこちらに向かってくる。

言葉で例えるなら、[怒]そんな言葉が相応しい、気持ちの悪い[何か]が俺の体を包んでいった。

…………

おい、

………………

やめろよ、

……………………

俺をどうするつもりだ!


[次の器はお前だ。]


その言葉を最後に、俺の意識は途絶えた。


……………………………………………


俺が目を開くと、そこは広大な草原が広がっていた。

景色マニアの男は、この美しい自然を見て今にも感動しそうだった。

そして俺は、ここが異世界であることを理解した。


「本当に俺が生きていた世界とは違う世界だ…っていうか、異世界って、こんなにも景色が違うのか…」


あれ…ここに来る前に、何かあった気がしたが…

思い出せない。

俺は、忘れる程度のことだったのだろうと割り切った。


「さて、何しようか…」


少年は期待を胸にいっぱいにしたが、笑みが漏れていたりは全くしていなかった。

むしろ、いつもよりも冷静なような気がした。

今から自分は何をして行けばいいのだろうか。何もない草原に1人ポツンとしていたのだ、そう思ったが、後ろから声が聞こえてきた。


「うぅ…」


懐かしい声がした。

…いや、懐かしいというか、さっきまで聞いていた声であった。

俺は直ぐに後ろを確認した。


そこには神がいた。さっきまで意識を失っていたらしい。

驚いた俺だったが、きっと、さっきの[もの]を届けに来てくれたんだと理解した。

理解した少年はすぐに感謝を伝える。


「神様、わざわざここまで剣を届けてくださるとは、ありがとうございます!」


俺は頭を下げて礼をした。そして頭を上げた。

神は、こちらを見てずっと驚いていた。何かあったのだろうか。

俺は問いただしてみた。


「えぇと…どうかされましたか…?」


神は言葉が出なかったのか、少ない語彙で俺の方に指を指して伝えた。


「か…髪、目…緑…!」


神はよくわからないことを言っていたが、彼女の言った言葉だけを整理すると、[俺の髪と目が緑色]ということらしい。

一応言っておくが、俺は中学生で髪を染めるなんてしていないぞ。

校則違反になるし、そもそも興味がないからな。

ただの[黒髪]中学生だ。

俺はそんなこと思っていたが、神の反応は異常だった。

俺は神の瞳を見た。神の瞳に反射した自分の姿が見えた。


[緑]だった。


瞳に反射した髪の色だから定かでは無い。しかし、黒髪ではなかった。

黒にしては色が鮮やかすぎた。

鮮やかな色だけでは緑と断定することはできないが、神のいうことが正しいのならば、少年の神は本当に緑色ということになる。

髪しか見えなかったが、どうやら俺の[目]を緑色になっているらしい。

なぜこうなった。俺には全く分からなかった。

しかし、俺は別に気にしていない。実際、言われるまで気が付かなかったレベルである。

生活に支障をきたすレベルではない。そう思った。

しかし、神はずっと驚いている。そんな神を落ち着かせるように俺は話す。


「神様、僕は緑髪でも緑目でも気にしませんよ。安心してください。とりあえず、木陰で少し休みましょうか。」


俺は女神の手を引いて近くの木陰に女神を座らせた。


しかし、不思議であった。


なぜ、髪や目が[緑]になったのか。

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