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昔、まだ子どもだった頃に、勝太にある質問をされました。
『どうしてお前はネエネエみたいに人を殺さないんだ?』
当時の私はネエネエほど美しくないからだとか、そんなことを答えた記憶がありますが、今同じ問いかけをされたなら、きっと違うことを答えたでしょう。
私にとって、人を殺すことは愛ではないから。
分かっていたんです。ずっと、頭では分かっていたんです。それでも、私はそのことを認めることの方が怖かったんです。それなのに、私はネエネエを汚されたことに怒り、我を忘れ、そして今に至るのです。
私は震える足でその場から逃げ出しました。後ろで浩三さんが何かをわめいていましたが、私が振り返ることは二度とありませんでした。
それでも、途中、偶然すれ違った車に上で人が倒れているとだけ伝えたのは、私がまだ人殺しにはなりたくないと願う、浅はかさから来るものだったのだと思います。
暗い山道をひた走りながら、考えていたのはネエネエのことではなく、勝太のことばかりでした。やはり、この前の話を受け入れなくて良かった。だって、私は彼の父を殺したかもしれないのです。今まで彼から受けてきた恩を、全て仇で返すような人間なのです。そんな人間が、あんな誠実な人の側で、生涯を共にすることが許されるはずがないのです。
どうか許してください。
こんな愚かな私を、絶対に許さないでください。
私には愛というものが分かりません。
私が浩三さんを刺してから、二週間が経ちました。その間私がどこにいたかは、どうせ分かることです。もしかすると、あなたのことですからもう分かっているかもしれませんね。この間私は一度もテレビを見てませんから、浩三さんがあの後助かったのか、それとも命を落とされたのか私は知りません。
きっと、この手紙を読んでいるあなたは、私がどうしてこのようなものを書いているか、分からないことでしょう。私は満月の明かりが照らす夜道を走りながら、ネエネエがそうしたように、私も自らの罪と向き合う必要があると考えました。
皮肉なことに、私ができる、あれだけ憧れたネエネエと同じことは、ただこれだけだったようです。
私はこの手紙に、伝えなければならない最低限のことを記したつもりです。それでも、この手紙が長くなってしまったことをどうか許してください。
ですが、あなたの父を刺した、私を許す必要は、決してありません。
私は、人を愛してみたかった。周りが特定の誰かを愛するように、私も誰かを愛してみたかった。
それでも、ネエネエの愛し方しか知らなかった私には、ネエネエの愛し方と自分の愛し方が異なっているのだと知った私には、他の方法がもう分からないのです。
ごめんなさい。これでこの手紙を終わります。どうかこの手紙が正しくあなたに届きますように。
最後に一つだけ教えてください。このようなことをあなたに問うことが、どれほど酷かくらいは、こんな私でも分かっているつもりです。それでも、問わなければならないのです。
ねえ勝太。あなたはまだ、私を愛していると言えますか?
マダ 海 @Tiat726
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