満月の下であまりに美しいネエネエの姿に魅了されるのは、そこに信じた愛があったから――。
まず引き込まれるのは手紙調という物語の進行。
この一方通行な視点だからこそ「ネエネエへの崇拝」をここまで緻密に表現しきった筆力にまず唸らされる。
絶対の愛をもつネエネエ、愛を放棄した親、愛を与える母、愛を信じる勝太。そして、愛しかたを知らない「わたし」
そんな「愛の形」を主軸に、回を進める度に人物たちが捻れるようにひとつの糸となり終息する構成力は、圧巻としか言いようがない。
各話のフック、モチーフの印象も強烈。
続きを読まずにいられない数多のフックと回の区切り。
そしてモチーフのセンスも素晴らしく満月はもちろん、「おい」「お前」ソフトクリーム、ハサミ、観覧車、脱げるスリッパ、電車の光、赤い車。それぞれをただ列挙しても特別とは言い難いこれらを、これほどまでに象徴的に印象づけてくる作品は稀であり、読後の日常生活でそれらを見たとき聞いたときに「マダ」をいつまでも思い出す。
些細な描写にも確かなインパクトを残していく、余韻に富んだ作品。
サスペンス要素の面白さを全面に出しながら、環境、血縁、人間の狂いに着目した情緒的ドラマがそこにある。
とくに、十八話における愛の表現は胸を鷲掴みにされ呼吸が止まる思いであった。
最後に、まだ続いていた「わたし」の愛の形を――肯定してよいのかと、胸の奥でそっと問いかけてしまう。
大変素晴らしい作品を、ありがとうございました。