カードゲーマーはテキストとルール、あとインチキ効果が大好き!

『遊戯王OCG』や『マジック:ザ・ギャザリング』、『デュエル・マスターズ』といったTCG(トレーディングカードゲーム)、そしてそれらを題材にしたホビーアニメをフィーチャーした異世界ファンタジー小説。
「土壇場で必ず切り札を引く」とか、「世界観が全然違うモンスターが対決する」といったカードアニメのあるあるをふんだんに盛り込みつつ、所謂悪役令嬢である主人公が強敵に知恵と工夫とプレイングで立ち向かう、という王道を(優雅に)貫いている。
……いや、ふんだんというには『こいつ、書籍化とかぜんぜん意識してないのか?』ってぐらい、カードやそれ以外のパロディ要素が溢れかえってサービス満点なんだけど……。

興味深い点として、カードの効果のぶつけ合いが一種「異能力バトル」のように展開する点がある。『呪術廻戦』や『ハンター・ハンター』を彷彿とさせるルールとロジックのぶつけ合いは、実はカードゲームで行われているカードのやりとりと近しい部分がある。
それが実際のゲームバランスをある種度外視した、小説ならではの派手な演出で表現されるのが面白く、カードゲームを普段やらない層でも楽しく読めるだろう。一方で、試合の展開や決着については「インチキ効果もたいがいにしろ!」と思うことは多々あるものの、情報の開示が巧みで、納得のいくものになっているバランス感が素晴らしい。

もちろん、自分のようなカードゲーマーにとっては、カードゲームのテキストの醍醐味……ルールや効果処理の組み合わせの妙を入れ込んでくるところに「そんなん紙のオタクしかわからんやろ」と楽しくなってしまうので、文句なしにおすすめだ。