第3話

  ギィとの会話は弾んだ。


「で、ヒロはここに働きに来たんだ。私はいいよ一緒に頑張ろうぜ!」

 

 先程から、ギィのいつものと言うのを7杯ほど飲んでおりジョッキに注がれているピンクの飲み物はアルコールが入ってるのかギィは顔を少し赤らめて酒臭い。

ギィは獣人だったのか隠したのであろうフサフサの尻尾と犬耳が姿を現していた。

 ギィの会話はめちゃくちゃで悪党をやつけるのが仕事だとか盗まれた物を潜入して取り返すのだと子供向けのヒーローアニメと間違えてるのだろうかと酔ってろれつも回っていない。


 「ギィ、飲み過ぎだよ~ロイも甘やかしたら駄目だよ。」


 背後から呆れ声が聞こえギィはその発声した者を睨みつけた。


「うるせぇよアイク!オメェはいつから俺のパパになった!」


 フラフラになりギィは立ち上がり千鳥足で1歩2歩と詰め寄った。

 ギィの愚痴は数分に続いたアイクは慣れているのかはいはいと軽く受け流す。

 博は昔働いていた家電量販店の副店長の酒癖の悪い所を思い出した。


「あらら、ギィが酔ってるのって珍しいね。」


 声でようやく気配を感じ振り向くと桜子がいた。

博は驚き咄嗟に一歩踏み出して驚いたが桜子だったので安堵した。

 桜子は手刀で酔ったギィの首の後ろを叩きその衝撃でギィは前に倒れ込んだ。

 素早い移動のため目では追いきれず博には何をしたのか分からなかった。

 

 「兄ちゃんギィの姿は他言無用だ。あと、そのクッキーを食ってヘッチャラとは大したもんだ。」

 

 カウンターの奥で新聞を畳み姿を現す。

 男性は大柄で身長は2mはある左目にはスコープの様なメカをはめていて全て金の歯を綺麗に噛み合わせてニカッと笑っている。

 クッキー…先程のヤツ…毒でもあるのか…博は咄嗟に首など体の至る所を触るが異常はなく、吐き気、倦怠感も感じない。


 「このクッキーには我々が倒した銀河警備隊ギャラクシアン共の血肉が入っている。」

 

「銀河警備隊は倒した時にその者の能力知識を経験値として手に入れるが私達バターズはそれができない。捕食して捕食者の能力の一片を手に入れる。」

 

 桜子はボソッと小声で呟く。


「でも、希望ができた。そのクッキーを食べて平気な人間が現れた。あとは食べた能力が実るかの問題だ。」


 桜子の冷たい視線から笑顔が現れた。

 倒れたギィを桜子は座敷で寝かせてロイに部屋に運ぶようにと指示した頃には全身黒いフサフサとした毛で覆われた獣人となっていた。

 ロイは無言で会釈し、ギィを抱いてTOILETと書かれた部屋に入っていく。男子トイレに。

 気になる。

 桜子に続いてロイも入っていった。

 TOILETに博が思う一般的なトイレではないのであろうか。

 博は席を立つ。


「よう、兄ちゃん。ちょいと借りるぜ。」


頭の中で響く。

その声を聞いた直後スッと力が抜け博は崩れるように倒れ込んだ。




 

 

 



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凡人王 碧山 @AOIKAKu

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