第2話
役所やビルが立ち並ぶビル街の反対側の寂れた都市貧民街へ。
貧民街に入るとビル街は石のタイルで綺羅びやかな街だったが2車線の道路を挟むとツンとカビ臭い匂いが体内に響く。
20年前には貧民街はなかったのだが近年、中小企業の倒産ラッシュに物価上昇が重なり各国で貧困層が上昇し、政府の一時避難場所として公園に仮設住宅として始まった仮設住宅がやめにやめられない状態になり今まで続いている。
「で、どこに行くんだよ。」
「もう少しでつくから」
貧民街の奥深くまで入っていく。
ビル街とは違い奥に行けば行くほど人々の服装は貧しく、すれ違う男女問わず継ぎ接ぎの服を着て、道端のすみには生きているのか死んでいるのかわからない人々が寝転がっている。
富田桜子って確か、昨年昼ドラで主役に抜擢されてそれからドラマバラエティーに引っ張りだこの女優。しかし、2ヶ月程度前に無期限の活動休止。世間は病気や死んだのではないかなど事務所と揉めている等噂は一時期テレビのニュースでも騒がれていた。
残念ながら博はテレビは幼い頃からあまり見ないで育ってきた為、流行りや俳優さんには疎くCMでちらっと見る程度でその人の名前など知りもしない。
考え事していると桜子とは距離ができており、二つ信号を通りすぎたところで止まっていた為少し小走りで彼女のもとへと行った。
「遅いよ、おじさん」
「おじさんではないし、君が早いのだよ」
荒くなった息を整えているうちに桜子は建物の中に入った。
<産動不田郷>一度読み方がわからず少し固まったが右横ガキになってるのを理解してすぐに頭に入ってきた。しかし、この郷田不動産はこの貧民街の建物としては綺麗であった。レンガ状の家で緑に塗装された木製のドア。取手は金色で装飾もされcloseの看板が立て掛けてある。中はだいぶ騒がしい。
恐る恐るドアを開けると外見とは違った内装だった。左側半分は座敷であり、右側には厨房とカウンター席が並び洋風なのか和風なのかチグハグだ。
「あっ、それロンです」
座敷では、4人で麻雀をしていて賑やかで桜子はカウンター越しに男性の方と話している。
桜子と目が合い手招きをされ横のカウンター席に腰掛ける。
桜子は男性にいつもの2つと注文をし、男性はかしこまりましたといい奥の部屋へと消えていく。
「コーヒーは無いけど紅茶でいい?」
桜子の問いかけに構わないと返事をしつつ周りをキョロキョロ見渡す。座敷で麻雀をしている男女とカウンター席の端で新聞を読んでる者と桜子と自分の8人。新聞を読んでる者は私が入ったときにちらりとこちらを覗いていた痩せた男性だった。
「もうしまいだ!」
大きな声と同時にガラガラと背後から音がして振り向くと麻雀のテーブルが倒れ座敷には牌が散乱していた。
「あーギィがまたやったー」
うるせぇとリーゼントヘアーの者が怒鳴る。男性だと思っていたが声は女性だった。
「ギィ。勝負なんだから負けるときだってあるよ」
「今日は勝てる気がしたんだよでもアイクがセコイ手を使うからやる気失せたんだよ。」
悪態をつきながら座敷から降り、博の横のカウンターの席に座り右腕で頬杖をついて「ロイ、いつもの頼む、酒濃いめで」と大声で奥の部屋からティーカップをお盆に載せてでてきた男性に言い、男性は軽く会釈し、そっと博にティーカップを差し出す。
「よう、兄さんこの辺では、見ない顔だな貧民街の者ではないな、姉貴にナンパされたのか?」
桜子の違うわよの早口の返答と同時に背中を勢いよく2回叩かれ体を前に乗り出しつつ耐えしのぐ。
とても痛い。
博は痛いという声を噛み殺しつつ「まぁ、そんな感じ」と返答それを聞いた桜子は少し頰を赤らめて奥のTOILRTと書かれた部屋へと入っていった。
ギィに気に入られたのかカウンターに置かれたビスケットの載った皿を差し出され「まぁ、これでも食って話そうぜ」と言われた。第一印象は元気な女の子という感じだ。
クッキーには二足歩行の手の4つある怪獣、二足歩行で顔は馬の顔の人、片目が無いゾンビなどが描かれた不気味なアイシングクッキーだった。
見た目で食欲は失せそうな物だがギィが鼻を鳴らして差し出すため渋々受け取った。
手に取ったのは怪獣4つの手を大きく広げて威嚇しているようにも感じる。味は卵とバターが香るオーソドックスなクッキーで中にピーナツなのだろうか細かくなって入っている。
なかなかに美味しい。
一つのクッキーをたいらげるとギィは喜んで「ほら、ほらよく食え」と新たに差し出すため手に取った。
ギィとの会話は些細なことだった。生まれこれまでのこと桜子との出会いなど。まぁ平凡な人生だった為そこまで面白くないはずだったのにかなりうけた。
「なんだ、
目をキラキラして序盤の話の事がずっと気になっている特撮の話が。
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