私の名前を当ててみよ
みこと。
全一話
困った状況だった。
「して、
ドレスを着た幽霊が、優雅に問うが。
(わかるわけが……ありません!)
そう言えたらどんなに楽か。
けれど降参を口にした途端、身体を乗っ取られてしまう。
言えん。口が裂けても言えん。
どうすればいいんだ――?
そもそもの始まりは、こうだった。
"古城を買ってホテルに改築しよう"。
友人とそんな計画をたて、売り物件を当たるうちに紹介されたここは、今までの中でも破格値だった。
なんでも"
この国じゃ、ワケあり物件もそれなりに客を呼び込める。
ゴーストツアー。好きな人は、好きだ。
出ると言っても、実害はない。噂では、
平気だろう。
そう思ってた。なのに!
寝室のひとつに、隠し通路らしい抜け穴を発見した。
入ってみたら、奥の部屋で幽霊と出会ってしまった!
実害無しの白いフワフワ? とんでもない。
ばっちり全身
しかも金縛り拘束状態ですが!
美人ですね、
その相手から、理不尽に"自分の名を当ててみろ"と問われ、今に至る。
正解したら、城に
ただし、
なんて条件。
男の身体なんて、お姫様には合わないと思います。
そう提案はしてみた。
でも、外に出たいだけだから、何でもいいのだとか。
お姫様は昔、敵に攻め入られてここに隠れたらしい。中からは開けられない隠し部屋。なんでそんな
外で何が起こったのか、何年経ったのか。
いろんな事が気になって、それを知るために外に出たい。
だから名前を当てろというのは、つまり……。
俺の身体目当ての
取引するフリして、横暴通そうとしてるだけだよね?
(とにかく、何とかしてこの場を切り抜けなければ)
緊迫しつつ悩んでいた時だった。
「おーい、リジー。どこにいるんだぁー?」
友人の声が聞こえた。
ここだ。そう返事するより先に。
お姫様幽霊が震え出した。
「リジー、と、言う名なのか。そなた」
「あ、はい。そうなんです。変でしょ、男なのに」
リジーは普通、エリザベスの愛称だ。
「実はうち、親も同じで、代々名前を受け継ぐ決まりなんです。祖先をたどるとエリザベスって王女様の名前らしくて。お城が落ちた時、行方知れずになってしまった彼女を探すために、名前を継いでいこうって──」
そこまで言って、俺は気づいた。
「あなたの名前はまさか、"エリザベス"?」
「……この城を、お前にやろう」
にっこりと女性が
途端に俺は、自由に
庭園の美しい古城ホテル。
観光パンフレットには、今はただ、そう案内されている。
私の名前を当ててみよ みこと。 @miraca
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます