#31 双翼
目の前で、ヴァルが笑っている。
たとえ敵だったとしても……もう正真正銘こいつは仲間だ。
あんな過去、もう二度と体験させる訳にはいかない。
そして、未だ開放されてない痛みからも助けてやらないと。
……この笑顔は、今までの苦しみからのものだろう。
先程まで、気だるそうな顔をしていたのにも関わらず、俺の提案を飲んだ途端に表情がぱっと明るくなった。
俺はこいつを助けないといけない。
かつての俺のようにはさせない。
ふともう一人、アズの方に目を向けると、下を向いたまま突っ立っている。
次はあいつを助ける番だ。
俺は寄り添うために、彼女の方へ歩みを進めた。
わたしたちはいつも一緒だった。
あの男に裏切られた、いや最初からそんなつもりはなかったのかもしれないけど。
そんなときでさえ、私にはヴァルという心強い仲間がいた。
ずっとふたりで一つだった。
何をするにも一緒。
だって双子なんだもん。
戦闘スタイルが違っても、結局はわたしたちの相性の良さがあれば敵なんていない。
ヴァルが、自分の才能について悲しんでいたときも、わたしは頑張って歩み寄ろうとした。
でも、そんな余裕がなかった。
だって、もう頭の中がぐちゃぐちゃなんだよ。
自分でも怒ってるのか悲しんでるのかわかんないの。
わたしはきっと壊れたんだ。
でも、壊れたわたしでもわかる。
今わたしはヴァルに必要とされてない。
いや、そんな存在になれてない。
いや、そんな存在が現れたから?
私達は二人でひとつなんだ。
ヴァル、そんなやつに…騙され………ないで。
だって、だって、だってっ……………
ワタシダケガ…ミカタデショ?
そうだよね?
【転生】チート能力は1つで十分だと思い知る @_てぃら @thi_ra210
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