24年短編集(三杉)

🌳三杉令

(掌編)ニーモのとある1日(カクヨム1周年記念)

 私はニーモ、20才女性、『ウォードの箱』の主人公です。

 とある経緯で体が10才くらいに縮んで若返ることができるんです。 https://kakuyomu.jp/works/16818093073330240618/episodes/16818093073330645828#end

 今日はクリスマスイブ。ウォード先生に薬局で薬を買って来るようにお使いを頼まれました。体が軽い小学生になって、走って買いに来ています。

 薬局は今日は早めに午後4時に閉まるとのことで急いでいるんです。

 そうそう、小人(コロボックル)のコロも一緒です。私の肩に乗っています。 https://kakuyomu.jp/works/16818093073330240618/episodes/16818093073410821940

「ニーモ、あまり急いで走ると転ぶぞ」

「だってえ、間に合わないもん」

「キャア」

 案の定、ニーモは転びました。まるで昨日のS先生のようです。気を付けてください(笑)


「あそこにも浮かれてるのがいるぞ」

 コロが言いました。ふと先の方を見ると、男の子がスキップをして走っています。


「あれは翔真しょうま君だ」

「コロはどうして男の子の名前がわかるの?」

「それは…… ある小説を読んだからだ」

https://kakuyomu.jp/works/16818093082553330357/episodes/16818093082554419465

 翔真はさくらを助けたことで浮かれていた。

 ふと、コロが独り言を言った。まるで誰かと話している様子。


「え、なんだメル? 何? 翔真君がこの後、車にはねられるって!? うんうん、そう言う事か、わかった」


「どうしたの? コロ?」

「メルから連絡があった。あの男の子はこの後、車にはねられてしまう。ニーモが防ぐんだ!」

「えー!! それは大変。転生しちゃうじゃない?」

「ニーモ、おまえ感覚がおかしい。ラノベの読み過ぎだ。それどころでは無いだろ、早く助けにいくんだ!」

「は、はい」


★Side:松山正運転中68才と後席66才 in 車(年齢は補正)

https://kakuyomu.jp/works/16818093082553330357/episodes/16818093088465286422

「ねえ、急がないと、薬局閉まるわよ」

「わかってるよ。最近目がしばしばしてさ」

「もう、危なっかしいわねえ」


 交差点が近づいてきた。逆光で眩しくて信号が見えない。

 というかただしさん、ちゃんと信号を見ていない。

 そこへ翔真君が近づく。


★Side:メル(ニーモの未来人)、少し離れたところで事態を見守っている。

「さあ、ニーモ、間に合うかな? 間に合わないと翔真がはねられちゃって小説のストーリーが変わっちゃうけど……」


★ニーモ(10才の体)

「ああ、急がないと!」

 ニーモは急いで翔真の方へ走って行った。


「そうだ、走れ走れ」

 コロは肩の上で余裕をかましている。


「もう、コロは役に立たないわねっ!」

「小人だもーん」


「翔真くーん!!」

 ニーモは大声で叫んだ。交差点まであと少し。

 しかし翔真は、ニーモの方に顔を向けるが足は緩めない。


「あいつ、バカだな。こっち向いて走り続けているぞ、車にはねられる前に電柱にぶつかるんじゃないか?」

 コロが心配する。メルは腕組みをして遠くからじっと見ている。


「翔真くん! 止まってえ~!!」

 ニーモがありったけの声で叫ぶ。


 さすがの翔真も、自分の名前を知らない女の子に叫ばれ、ついに走るのを止めた。

「そのまま、動いちゃダメえ!」


 翔真は茫然とした顔で立ち止まったまま。


 次の瞬間、松山妻が叫んだ。

「あなた、信号赤!!」

「うえっ?」


 松山正の車は赤信号の交差点を通過していった。幸い他の車が通らなかったので事故が起きることはなかった。


「良かった~、翔真君助かった~」

 ニーモがほっとする。


「俺のおかげだな」とコロ

「何、いばってんのよっ!」

 ニーモがコロの首を掴んで摘まみ上げる。


「いたっ、やめろっ、そこを持つなって!」

 コロは脚をバタバタさせて騒ぐ、いつものお約束である。


 翔真がニーモに言った。

「あ、あの、あなた誰ですか? 止まってって?」


「あ、いえ、何でもないの、危ない車がいたからね」

「そうだったんですか、ありがとうございます」

「それにしても、随分浮かれて走ってたわね」

「あ、いやその友達とちょっと」

「女の子でしょ?」

「い、いえ」

 翔真は赤くなった。そしてコロに気づく。

「そ、それ! 小人だ!!」


 コロが言う。

「いかにも、体は小さいが心はでかい。正義の味方コロボックルのコロとはオレのことよ!」

「でかいのは態度でしょ!」

 ニーモが言う。

「翔真君、コロを見たことは秘密にしてね。じゃあ、気を付けて帰ってね」

「うん、わかりました。たまげたな」


 メルが遠くからその様子を見て微笑んだ。


 歩いて自宅へ向かう翔真をニーモとコロは見送った。そして気がついた。


「ニーモ、薬局!」

「ああ、もう閉店時間になっちゃったー」

「まあ、仕方ないよな」


 嘆く二人であった。




 ◇ ◇ ◇



 車の中で……


「あなた、信号無視したわね!」

「あ、いや、太陽がまぶしくて」

「そんなの理由になんないわよ、事故おこしたらどうすんのよ!」

「はい、すみません……」

「今後は絶対に気を付けてね! 罰として今日の夜はお勤めよろしく!!」

「えー、お前この年でまだやるんか……死ぬ」



  ― 了 ―



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 12.20でカクヨム1周年となります。

 お読みいただきありがとうございました。

 今後ともよろしくお願いいたします。


(2024.12.8) 三杉 令

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