第5話 EP2 ウィズモア飛行場 (3/3)

 三十分ほどまた居眠りしただろうか?そばで一緒に寝ていたマメも目を覚ました。ニーモはさすがに時間が気になってきた。


 ウォード達は確かお昼に戻るって言ってた。今いる場所がわからない。どの方向に行けば戻れるんだろう。

 ニーモはマメを抱いて草原を彷徨い始めた。


「ちょっと困ったなー」


 しばらくすると、声がした。

「おい」


 何か下の方から可愛い声がする。

「おい! おまえ」


 ニーモは草原をきょろきょろと見回した。

「ここだ! 見えるだろ」


 いた。小人!!!

 草に隠れるほどの小さな人間がいる。


「あなた誰? 小っちゃいね」

「コロボックルだよ。有名だろ」

「え? コロボ……」


「コロボックル! 先住民だぞ、無礼な」

「知らない」

「あー、最近の人間は全く……」


「何してるの?」

「こっちの台詞だ。お前こそ我々の聖域で何してるんだ?」

「迷ったの」


「あー、全く。こっちに来い、案内してやる。いやお前の手の上に乗せろ」

「はい」


 ニーモはコロボックルの首の後ろの服をつまんで持ち上げようとした。


「その掴み方は止めろ」


 ニーモが指を開くとコロボックルは服を整えた。今度はわきの下に指を入れた。


「ぎゃはははは、その持ち方もだめ」


 ニーモは手で包むようにしてコロボックルを持ち、手の上に乗せた。 


「それで、いいんだ」

「あなた、偉そうね」

「うるさい。あっちだ。歩け」


 コロボックルは林の方を指さした。

 コロボックルに指示されるがまま進むと林の奥に民家が見えた。


「あの家に行けばいい。普通の優しい人間の家だ」

「ありがとう。また会える?」

「ああ、先住民だからな」


 そう言うと、コロボックルは思いついたように言葉を続けた。


「そうだ、お前ザックという人間を知らないか? 最近、エリモアあたりをうろついているという噂を聞いた。しかも今日はなんかやつの匂いもする。おまえからするのか?」


 ニーモはぎくりとした。自分の体の匂いを一応嗅いでみる。そもそもザックの匂いってどういう匂いなの?


 しかしいきなりザックの名前が出てきた。知ってるも何も彼は今近くにいるけれど、まだ何も言わない方がいいような気がする。


「あー、知らないわ……、たぶん」

「そうか、それならいい。じゃあまたどこかで」

「バイバイ」


 コロボックルと別れたニーモは民家の玄関ベルを鳴らした。その民家のおばさんはとても優しくて、ニーモが飛行場で迷ったことを伝えると、快く家にあげてくれてマメ含めて昼食までくれた。


 昼食を食べ終えてボーッとテレビも見せてもらっていると、ザックがやってきた。どうしてここにいることが分かったんだろう。でも良かった。何か文句を言っている。


「ニーモ、連絡方法教えただろ……」

「ごめん、操作方法わすれちゃった」

「まったく」


「あの、ザックさあ、コロボックルって知ってる?」

「……ああ、知ってるけど、それがどうした?」


 ニーモはそれ以上は話さない方がいいと思った。


「ううん、何でもない」

「おまえは、まだ新しい脳細胞が成長中でしゃきっとしてないんだから、一人でいる時は気をつけなきゃ……」


 ザックのペラペラ続く声がニーモには子守歌に聞こえてきた。間もなくニーモは眠ってしまった。


「寝ちゃったよ、疲れたんだな」


 気が付くと、ウォードとザックと三人で、ホテルに向かうタートルに乗っていた。

 タートルとはこの世界の車で、静かだけど遅い。自然にやさしい乗り物だ。


「ワン」


 マメもいた。

 夕焼けがきれいだった。

 今日は最高の一日だったな。



<エピソード2 終わり>

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る