エピソード3 モーテルにて

第6話 EP3(1) モーテルにて [到着!]

 ウイズモアの街の片隅にあるモーテル。そこが今日ウォード達が泊まる場所だ。モーテルへ続く郊外の通りをタートルはみんなを乗せて静かに、そしてゆっくりと進む。ザックは街路樹の隙間から差し込む美しい夕焼けを見つめている。風に乗って何かの植物の香りが流れてくる。


 ザックの横にはすやすやとまだ寝息を立てて眠っているニーモと新しい仲間の子犬マメがいる。1人と一匹の暖かな体温がザックにも伝わって、ザックは幸せを感じる。ウォードがザックに告げた。


「そろそろモーテルに着くぞ」

「ああ、ニーモを起こすよ」


 モーテルは柔らかな街路樹に囲まれた、二階建ての白い質素な建物だった。窓からはオレンジ色の明かりがいくつか漏れて旅人にここが安らぎの場所だよと告げている。


 通りをはさんでモーテルの向かいには、これも質素な平屋のレストランがある。こちらも電気が付いており、気の早い客が一人、二人とレストランに入ろうとしている。仕事終わりで食前にアルコールを楽しむつもりだろう。


 立地から言って、モーテルの客もレストランの客として当て込んでいるのだろう。ウォード達の夕食もここになるに違いない。


「ニーモ、そろそろ起きろ。着いたぞ」

「ふあーあ。よく寝たあ」

「お前、そんなに寝たら夜眠れなくなるぞ」

「そう? 大丈夫よ」


 ニーモはそばにいるマメに気が付いた。


「マメー、大人しくしていたの? お利巧だねえ。ホテルに着いたって!」

「ワン!」

「あれ、ちっちゃなホテルねえ」


 ウォードが話す。


「モーテルだよ。この辺には大きなホテルは無いんだ。まあ、たとえ立派なホテルがあったとしても、どうせ払える金は無いんだがね」

「先生、私小さい部屋の方が好き。ねえマメも一緒に部屋に入れるよね?」

「ああ、大丈夫だよ」

「良かったあ」


 ニーモはマメと顔を見合わせて笑った。実際にはマメは笑わないし、もちろん意味も分かっていない。でもニーモは犬の方が人間よりも何倍も幸せだろうと思う。自分もそんな犬になりたい。他人と触れ合うのに会話ってそんなに大事なのだろうか? マメを見ていると思う。


 会話を交わさなくとも、触れていれば心を通わせることはできる。癒される。実はニーモにはその感覚が重要なのだということが、すぐにわかることになる。

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