ウォードの箱 - On the Growth of Girls in Glazed Cases
🌳三杉令
Season 1
第1話 別世界 ウォード精神科クリニック
私はクレア、二十二歳。
未知の場所への旅行が大好き。
仕事はフリーランスなんだけど、時々このクリニックで看護師もしている。ウォードは医者。このクリニックはウォードと私だけで一年間運営してきたけどもう限界。
ウォードは先生なんてがらじゃない。経営が下手なの。それなのに大金叩いて闇ルートで怪しい箱を手に入れた。その光る四角い箱を患者の治療に使えるか試している。患者はニーモと言う二十歳の精神障害の女性だ。
あともう一人ザックって男が、なぜか最近クリニックに居座っている。患者の面倒はよく見てくれるけれど……。私より少し年上でウォードの知り合いらしい。背が高く、いつも格好をつけているキザなやつだ。
◇ ◇ ◇
僕はウォード。まだ若いが一応開業医だ。でも立地が悪いせいか、このクリニックに患者はあまり来ない。建物は一年契約。もう家賃が払えないので丁度一年の明日、この建物から出ていかなければならない。今日、僕は出発の準備で街に出かけている。明日は身寄りのない患者も一人連れて行こうと思う。ザックも一緒だ。
◇ ◇ ◇
私はニーモ(っていう名前だったっけ?)
クリニックの中に、光で構成されている縦横1メートル高さ2メートル弱の直方体の箱がある。そこは私の小さな部屋だ。先生はこれをGlazed Case(ガラス箱)と呼んでいる。実際は箱と言うよりは単に淡く光る四角い空間だ。私を囲んでくれて、私が歩くとその光も一緒にくっついてくる。グレーズドケースは私を全てのものから守ってくれる。
ニーモは作業机に無造作に置かれたウォードのノートを開いた。
「先生の日誌だ。読んでみよう」
三月八日
不思議な事が分かった。例の謎のケースで治療していた女性の脳細胞が変化している。PTSDが修復されている! 別の世界から入手したというこのケースは一体何なのだ?
三月十五日
興奮している。この一週間徹底的に女性患者の状態を調べた。ものすごい回復だ。心的障害はほとんどなくなった。しかもこのガラス箱は女性の細胞を若返らせている。学会に緊急報告すべきだろうか? 迷うところだが速報は入れておこうか。
三月二十二日
これはまずいかもしれない。いまや少女と呼べるまで肉体が十歳程度若返ったこの女性は、異常な能力を持ち始めている。超進化が始まっている可能性がある。
三月二十九日
今月でこのクリニックは店締まいだ。行く先は決めてある。アトランティスだ。
ニーモは連れて行くしかない。
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